「コスト」で住宅購入決断の悲劇…地域の人口減少で生活困難、価値下落で売却も困難
人口減少時には、当然、日本全体が均一に減っていくのではなく、二極化が進展する。減少が進む地域ではその減少が加速していき、一方、都心部など減少する地域からの流入がある地域は人口が大きく減らず、その差はますます開いていく。この「日本創成会議」の資料を見ても、地域による格差は鮮明だ。
しかし、東京都豊島区に住宅を買った人もこれだけで悲観するべきではないし、横浜市都筑区だから安心というわけでもない。区のなかでも、たとえば最寄り駅ごとの違いや最寄り駅からの距離の違いなどでも大きな差が生じるからで、さらに細分化したエリアの違いでも二極化は進行していくと考えるべきだろう。
住宅を購入した場合の人口減少によるデメリット
あるエリアの人口が大きく減少すれば、そのエリアの不動産価格も大幅に下落するのが自然である。住宅を購入した場合、人口減少による大きなデメリットは、さまざまな理由で転居をする必要が生じても売却価格が安くなってしまうことで、転居が困難になるリスクがあることだ。
一生涯、購入した住宅に住み続けるのであれば、不動産価格が下落しても関係ないと考える人もいるだろう。しかし、人口減少によるデメリットとして、そのエリアの利便性が大きく低下する、あるいは住むことが困難な状況になることも考えられる。人口が減少すれば、日常生活に必要な店舗や病院などが撤退していく、最寄り駅からバスを利用するエリアではバスの本数が減る、あるいはバスがなくなってしまうということが起こり得るのだ。東京・横浜でもエリアにより充分起こり得る状況であり、50年100年単位の未来ではなく私たちが老後を迎える数十年先の推計である。
それでは、リスクを考えると住宅は購入しないほうがよいのだろうか。所有すること自体に情緒的な価値を見いだす人も少なくないのは事実。住宅ローン金利が低く住宅ローン減税が手厚い現在は、購入するのであれば好機と見ることもできる。
住宅購入を考える人には、こうした情報を提供した上で、人口動向も含めて資産性を維持しやすい物件選びをするアドバイスを行っている。
(文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)