20~50代が個人年金に入らないほうがいい理由
もうひとつ、従来型の個人年金の致命的な欠陥は、物価の上昇に弱いところです。
人事院が発表している国家公務員の初任給を見ると、今から40年前の77年は大卒で9万円前後。現在は18~20万円なので、40年間で初任給は約2倍になっています。ということは、40年前の2万円は、今では4万円の価値になっている可能性があるということです。
これから先の40年についてはわかりませんが、少なくとも過去40年の物価上昇ペースから見れば、返戻率が200%ではなく127%しかないというのは、「実質目減り」といっても過言ではないでしょう。
そもそも、20代、30代、40代は個人年金などに入るよりも、やらなければならないことがたくさんあります。20~30代では、マイホームを買うために大きな住宅ローンを組む人がいます。そういう人は、個人年金に加入する前に住宅ローンを減らすべく繰り上げ返済をしたほうが絶対に有利です。
たとえば、2000万円を金利1.5%の35年ローンで借りた場合、年金保険料として月2万円を支払うのではなく、月2万円ずつ貯金して5年後に120万円を繰り上げ返済すると、支払利息が約64万5000円も少なくなります(期間短縮)。
それなら、個人年金の積み立てなどをしているよりも、住宅ローンの繰り上げ返済をしたほうがよほどいいでしょう。
40代になると、子どもの教育資金が山のようにかかってきます。そんななかで、教育ローンを借りる人もいるようですが、教育ローンの金利は通常で4%前後です。そんなに高い金利のお金を借りながら個人年金の積み立てをしているというのはナンセンスでしょう。
では、50代ならいいのかといえば、50代になると払った保険料に限りなく近い金額しかもらえなくなり、ほとんど意味がなくなります。
以上のことを総合して考えると、従来型の個人年金はおトクではありません。一般的に「おトク」といわれる商品で見てもうまみがないのですから、ほかの商品は推して知るべしでしょう。しかも、途中で解約したら損をするというマイナス面もあります。
ただし、過去の運用利回りが高かったときに加入している人は、低金利の今でも高い利回りで運用されているので、「お宝年金」といえます。
個人年金の運用利回りは、94年3月までが4.75%、94年4月から96年3月までが3.75%、96年4月から99年3月までが2.75%。20年前に加入している人は、解約せずにその個人年金を最後まで大切にしてください。
(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)
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