資格不要のカイロプラクティックや整体、頚椎損傷等の重傷事故続出…厚労省が注意喚起
では、「カイロプラクティック」「整体」「リフレクソロジー」「エステティック」「足裏マッサージ」「タイ古式マッサージ」といった業種は、どう分類されるのかといえば、「医業類似行為」の範疇に入らない「リラクゼーション」の扱いとなっています。いわゆる「民間療法」というもので、人体に害を及ぼさなければ、何でも行えます。そのため、怪しい療法を名乗っている事業者をたまに見かけます。当然ですが、リラクゼーションは「治療」ではありませんから、家族で年間10万円以上の医療費がかかった場合の「医療費控除」の対象にもなりません。ただし、医業類似行為になる「マッサージ」という言葉を使っているサービスは、「あんま」「指圧」と誤認しやすいため、医療関係者の間で問題視する声も多いです。
医業類似行為者である柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師といった国家資格者になるためには、最低3年間(大学は4年)専門学校で学び試験を受けなければなりません。民間リラクゼーション療法のほうは、手軽に開業ができるのですから、ある意味、国家資格者の業務独占権を大幅に侵害している業態ともいえるのです。
当然ですが、事故も起きています。カイロプラクティックでは頚椎損傷、整体では肋骨骨折、エステのフラッシュ脱毛では火傷などです。事故が起き、被害が訴えられると警察が「医師法違反」で逮捕するという後処理対応になっています。タトゥー専門店がお客の体に刺青を施しても、被害の訴えがなければ捕まらないのと同じ理屈なのです。
「最高裁判決」がお墨付き
なぜ、こんなことになっているのでしょうか。
1960年の最高裁判決が、「無届の医業類似行為が禁止処罰の対象となるのは、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務に限定される」という判断を下したからでした。これが錦の御旗となり、民間療法は、それをもってして事前に害を及ぼすものと決めつけることはできない、という解釈になりました。
こうして、カイロプラクティックも整体も、エステも、タイ古式マッサージも、堂々と営業が行われ、国家資格者のほうが、かえって割を食っている現状があるわけです。
もちろん、厚労省もまったくの無関心というわけではありません。91年には、カイロプラクティックの施術に対し、健康政策局医事課長名で次のように通達を出しています。
「カイロプラクティック療法における頸椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を与える危険が大きい」
私たちが肝に銘じておくべきなのは、誰でも今日から前述した「リラクゼーション」ビジネスを始められるということです。こうしたサービスを受ける際には、「自己責任」ということを忘れないことが大切です。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)
※世の中に数多ある、当事者たちにとっては知られたくない事情をほじくり返した著者の最新刊『知られたくないウラ事情「不都合な真実」』(ぱる出版刊)が9月8日に発売になります。ビジネスから政治、経済、日常生活に到るまで、ブラックな日本社会の仕組みとカラクリを暴き、賢く生き抜くためのサバイバル戦術として、知っていただきたい事柄を多数集めましたので、ぜひ、お読みいただければ幸いです。