不動産会社の「家を買っても大丈夫」は要注意?住宅ローン「返せる額」を知る方法
キャッシュフロー表は生活費の設定が正確でないと精度が低い
3つ目は上述したキャッシュフロー表を作成し検証してくれるケースである。キャッシュフロー表とは自身と家族の将来のライフイベントや家計の収支、貯蓄残高等を一覧表にしたもので、さまざまな仮定の上ではあるが、数十年先の貯蓄残高を予測できる。不動産会社が提携のFPをお客様に紹介し、検討している物件を購入し住宅ローンを借りたという仮定に基づき、キャッシュフロー表を無料、あるいは非常に安価に作成してくれるということも増えてきている。
キャッシュフロー表を作成して検証するというと、精度が高そうに思ってしまうが、実はそうでもない。キャッシュフロー表上の老後の貯蓄残高に大きな影響を与えるのは、生活費の設定だ。世帯主年齢40歳未満の2人以上世帯の消費支出(社会保険料や税金、貯蓄型の保険料などを含まない支出額)の平均月額は約26万円(総務省統計局「家計調査」<平成28年 年報>)である。
少々乱暴だが、35歳から95歳まで消費支出が変わらないとして、月額26万円と仮定した場合と同じく21万円と仮定した場合では、95歳時の貯蓄額は5万円×12カ月×60年=3,600万円も後者が多くなってしまう。つまり、月の生活費の設定を実際より数万円少なく設定してしまうと、価格がかなり高い物件を買っても大丈夫なように見えてしまうのだ。
ほかのFPや不動産会社が作成したキャッシュフロー表に対するセカンドオピニオンの依頼は、このところ増え続けている。生活費の実態を把握し、それより減らす具体的な方法をアドバイスした上で、生活費を減らしたキャッシュフロー表を作成するのであればよいが、なかには生活費が極端に少なく設定されていて現実味に乏しいものも見受けられる。
この場合、作成したFPが悪いのかというと、単純にそうとは言い切れない面もある。自分たちの生活費を正確に把握している人は少ないため、お客様に尋ねた生活費をそのまま採用すると、実際よりかなり少ないということも多いのだ。
「住宅の価格が高過ぎないか」を判断するには、返済負担率も意味はあるが一律に25%では判断できない。やはりキャッシュフロー表を作成して判断したいが、生活費を正確に把握していない場合は精度が低くなってしまう。実は生活費を正確に把握していなくても、ある程度高い精度でキャッシュフロー表を作成できる方法もあるので、不動産会社とは関係のない第三者で、相談経験が豊富なFPに作成を依頼して判断するほうが望ましい。
(文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)