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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

ゆとりある老後、年金プラス月額12.8万円必要?「ねんきん定期便」で老後不足額がわかる

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

「転職が多い」「姓名が変わった」人などは、年金記録の確認を!

 ただ利用開始から着実に件数を伸ばしているとはいえ、現役世代の公的年金の被保険者数6,712万人(平成27年度末時点)のうち、IDを取得しているのは、わずか約5.2%にすぎない。

 そして、年金記録といえば、平成19年に発覚した「年金記録問題」を思い浮かべる人も多いだろう。日本年金機構によると、約5,095万件の持ち主不明の年金記録のうち、基礎年金番号と結びついたのは約2,961万件(平成25年6月時点)。まだ約4割が不明のままではないか。

 ねんきん定期便やねんきんネットを使って、本人から申し出てもらうことを期待するしかないらしいのが、なんともお粗末だが、これらの記録の多くは、すでに死亡している場合や受給資格期間に足りず、年金受給に結びつかなかった場合とみられている。

 平成29年8月1日以降、これまで25年以上必要だった受給資格期間が10年に短縮された。受給資格期間が足りずに年金受給を諦めたという方は、年金記録に漏れがないか再度確認をしていただきたい。とくに、「転職が多かった」「結婚などで姓名が変更した」「色々な名前の呼び方がある」の3つが記録漏れの見つかるパターンの9割を占めるという。

生活資金を試算すると退職後の満足度が高くなる

 ねんきん定期便などで、自分が受給できる公的年金の水準を確認してほしいのは、実際にかかる生活費との差額を実感していただきたいからだ。

 今年1月に発表された、厚生労働省が示す平成30年度のモデル年金額は、国民年金が月額6万4,941円、厚生年金が22万1,277円(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)となっている。後者は、専業主婦の妻と会社員の夫2人の年金額で、会社員1人分の公的年金支給額は、平均月額約15~16万円といったところだろう。

 ここから、税金や健康保険料、介護保険料などが差し引かれるわけだから、国民年金のみの自営業・自由業はもちろん、会社員であっても、公的年金だけの収入では、現役時代と同じような生活水準のままというわけにはいかないのは一目瞭然である。

 生命保険文化センターが行った意識調査では、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額平均22万円、ゆとりある老後生活を送るための費用として、必要と考える上乗せ金額は月額平均12.8万円となっている。要するにこの12.8万円をどのように捻出するか、早めに考えておくということだ。

 ちなみに、みずほ銀行が行った退職前と退職後の男女合計2,000人へのインターネット調査によると、退職後の生活の満足度の高い人は、投資経験があり、上手く運用できた人(満足度77.7%)、退職後の生活資金を試算した人(同72.1%)なのだという。

 何かとハードルが高そうな投資経験はさておき、退職後の生活資金を試算するのは誰でもできる。老後の生活の満足度がアップするというなら、やってみて損はないだろう。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
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