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使途秘匿金課税の趣旨は、企業が相手先を秘匿するような支出は、違法・不当な支出につながりやすく、それがひいては公正な取引を阻害することになるので、それを抑制することにあるとされています。
調べによると、この法人のビール券はお中元・お歳暮時期に配送され、「申込票」に記載されたビール券の送付先は、いずれも取引先の関係者でした。また、お中元・お歳暮として相応しい金額で、これを帳簿書類に記載しないのは一般的です。
法人の収入や経費を帳簿に記帳するに当たって、ある程度まとめて入力したり、摘要欄を空欄にしたりすることは、ままあることだと考えます。多額であるならまだしも、納税額にもそれほど影響のない経理処理を、いちいち細かく入力していたらキリがありません。
年間十数万円の経費を否認して、滅多に処理しない使途秘匿金にすることで、関係法令を調べ、税法上適正であるか、ほかの職員に判断してもらい、上司やそのまた上司と検討し、公務員の労働時間をいたずらに消費するのは、芳しくないように思えます。
税務調査では、「こんな小さい金額をとってもしょうがないじゃん」と、否認事項があっても「指導」にとどめる、といったことがよくあります。費用対効果や納税者の気持ちに配慮した慣習です。今回そうしなかったのは、現場にいる人間だけがわかる“のっぴきならない状況”があったのかもしれません。
最終的には、この法人がビール券を贈答した相手の氏名等を帳簿書類に記載していないことには「相当の理由」があり、使途秘匿金の支出には当たらず交際費に該当すると判断されました。
単に「支出先が不明」であるというだけで、使途秘匿金として処分された方は、内容を精査してもいいかもしれません。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)
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