マンション購入時に加入した火災保険、多くの人が過剰な補償で保険料ムダ払い
新築のマンションの場合、マンション販売会社の関連会社や提携先の保険代理店などが購入者に一斉に火災保険を提案するのが一般的になっています。そして、購入者の多くは、大きな疑問もなくその提案を受け入れ、加入しています。
私の顧客がマンションを購入する際、そうした提案を見せてもらうことも多いのですが、建物の補償額が「1500万円」となっている提案をときどき見かけます。5000万円で購入した専有面積70平方メートルの分譲マンションに火災保険をかける場合、建物の補償額をいくらにするのが妥当か、あなたは想像できるでしょうか。
妥当な建物の補償額はマンション購入金額よりはるかに少ない
インターネットで火災保険の見積もりができる保険会社3社で、上記の条件で建物の補償額の目安を出したところ、以下のようになりました。
・A社 850万円
・B社 890万円
・C社 850万円
(建物の所在地は神奈川県、建物の建築年は2019年2月、補償開始は2019年3月と想定)
補償額の目安が購入価格の5分の1を下回る金額という結果ですが、思ったより少ないと感じた人が多いのではないでしょうか。なぜこのような金額になるのでしょうか。
そもそも分譲マンションの購入価格には土地代と建物代が含まれています。さらに建物には「共用部分」と「専有部分」があり、共用部分にはマンション管理組合が火災保険をつけるのが一般的です。自分で火災保険を契約する必要があるのは建物のうち専有部分だけということになります。つまり、専有部分の価値はマンション全体の一部分でしかないため、妥当な建物の補償額は購入額に比べると、相当少なくなります。
「専有部分」は壁や床を含まない
ここまで理解しても、「金額が少な過ぎる」という感覚をぬぐえない人もいるかもしれません。その大きな原因は、専有部分とはどこからどこまでなのかを、ほとんどの人が把握していないことにあると思います。
専有部分と共用部分の境目をどこにするかは、マンションの管理規約で定められます。管理規約は、国土交通省の「マンション標準管理規約」の基準でもある「上塗基準(うわぬりきじゅん)」を採用しているのが一般的です(※)。上塗基準とは、専有部分と共用部分の境目を部屋の内側とすることを指します。隣の戸室と自分の戸室を隔てる壁(界壁)や、上下階と隔てる天井や床、つまりマンションの躯体部分は専有部分に含まれません。専有部分に含まれるのは、表面の壁紙や床材などと、部屋の内側にくっついたキッチン・バス・トイレなどの設備ということになります。専有部分の妥当な補償額は、部屋の中をそのまますべてリフォームしたときの金額と考えると、わかりやすいでしょう。