このところの株式相場は、日経平均株価で前日比が800円ものマイナスとなったと思うと、翌日には500円のプラスになるなど、乱高下が続いています。そして、大きな上下を繰り返しながらも、徐々に下がってきているのが心配です。オミクロン株による感染拡大による影響というよりは、アメリカで早期に金利引き上げがなされるのではないか、との警戒から不安定な動きになっているようです。
日本の株式相場での売買は、海外の機関投資家が占める割合が高く、アメリカの株式相場の動きに影響されます。アメリカの株式市場が不安定になっているため、それが日本の相場にも影響を与えています。最近のアメリカでは物価上昇が続いており、それを食い止めるために、中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)が政策金利を引き上げるのではないかと警戒されています。すると、株式市場から資金が流出し、株価が下落する可能性が高いというのです。
・物価の上昇 → 政策金利の引上げ → 資金が株式市場から流出 → 株価の下落
という流れです。アメリカにしろ、日本にしろ、金利が上昇すると株価は下落するといわれており、それが“定説”になっています。しかし、この“定説”は必ずしも正しくはありません。金利と株価の関係を整理してみましょう。まずは金利と株価の関係を「式」にして表してみます。
・金利が上昇する = 資金が株式市場から債券や預貯金に移る = 株価の下落
・金利が低下する = 資金が債券や預貯金から株式市場に移る = 株価の上昇
次は、景気と金利の関係です。
・景気の拡大 = 資金需給のひっ迫&中央銀行による利上げ = 金利が上昇する
・景気の低迷 = 資金需給の緩和&中央銀行による利下げ = 金利が低下する
となります。ここで、連立方程式のように、上下の式を合体させます。すると、
・景気の拡大 = 株価の下落
・景気の低迷 = 株価の上昇
あれ? 少し変だと思いませんか? 株価は企業業績を反映するものです。景気の拡大=株価の上昇 にならないとおかしいはずです。
株式市場の状態次第
株価の動向を金利との関係だけで考えると、景気が悪いほうが株価は上昇する、という結論になってしまいます。金利の影響を重視する市場関係者のなかには、はっきりとは言わないものの、そう取られかねない発言をする人もいます。あながち間違いとは言えないでしょう。
はたして景気が拡大すると(=金利が上昇すると)、株価は上がるのか、それとも下がるのか?
実は、上がる方向にも、下がる方向にも作用しています。作用の方向性を分けるポイントは、株式市場の状態が、いわゆるバブルのような状態になってるかどうかでしょう。バブルの状況=だぶついた資金が株式市場に流れ、株価が上昇している場合は、金利が上昇すると、資金が株式市場から債券や預貯金に移り、株価は下落する傾向があります。日本の平成バブルやアメリカのITバブルの際は、景気の拡大が続いているにもかかわらず、金利の上昇によって株価は下落を始め、それがやがて景気をも悪化させていくようになりました。
一方、バブルではない状況=企業業績の向上にともなって株価が上昇している場合は、景気が拡大していれば、たとえ金利が上昇していても、株価は上昇していきます。2015年からのアメリカでは金利を引き上げましたが、その間も株価は上昇を続けました。好景気で企業業績の向上が続いていたからです。
金利の上昇と企業業績の向上は、同時並行で起きますが、どちらが強く株価に影響するかは、その時の状況によって異なります。金利の上昇は、株価の上昇にも下落にもつながるのです。
今後、FRBが利上げを行うのに伴い、株価がどちらに動くかは、今のアメリカの株式相場がバブルであるかどうかの判断で違ってくることになります。もちろんこれだけではなく、金利上昇のペースや、金利と成長率の関係などによっても結果は違ってきますが、少なくとも、金利の上昇=株価の下落 とは決めつけないほうがよいでしょう。
(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)