保険はいらない?(「同社HP」より)
定期医療保険は、支払う保険料は年々高くなる。これは年齢が上がるほど病気になる確率が高くなるためである。保険会社としては、保険金を支払う可能性が高まるのだから、その分を上乗せしなければ割に合わなくなってしまうという理屈だ。
いっぽう、「保険料は一生上がりません」と謳うCMをよく見かけるが、これは終身医療保険のCMである。月々の保険料は比較的低めに設定されていて、値上がりなし。しかも保障が一生涯続く。なんともお得に見えてしまうところだが、飛びつくのは待ってほしい。終身医療保険の場合、保険料の支払い方法には「終身払い」と「○○歳払込終了」という2つのタイプがあり、月額保険料は「終身払い」のほうが安い。
両方とも保障期間は一生涯であるが、保険会社が「月額保険料が安い」という謳い文句で、顧客に優先して薦めるのは「終身払い」タイプのほうだ。たしかに月額保険料は一定額で安いものの、定年を迎え、年金だけの生活になったあとまで、ずっと保険料を払い続けなければならないのである。
「終身払い」は長生きするほど損をする!?
では、この「終身払い」タイプは、果たして本当にお得になっているのだろうか?
わかりやすいように、具体的な例を挙げて見てみよう。
30歳男性のAさんとBさんが、入院給付金日額5,000円の終身医療保険に加入したとする。
・Aさんは「終身払い」を選択し、月額保険料は2,015円。
・Bさんは「60歳払込終了」で、月額保険料は2,872円。
それぞれが払う保険料はどうなるか。
<Aさんのケース>
30歳~60歳までに支払う保険料は、2,015円×12カ月×30年=725,400円
さらに、80歳まで支払ったときには、2,015円×12カ月×50年=1,209,000円
さらに、90歳まで払うなら、2,015円×12カ月×60年=1,450,800円
<Bさんのケース>
30歳~60歳までに支払う保険料は、2,872円×12カ月×30年=1,033,920円
60歳払込終了なので、以降の負担はなし。
(Aさん同様、保障期間は一生涯)
もちろん入院すればどちらのタイプも給付金が出るとはいえ、入院限度日数60日(通算1000日)を選択した場合には、1回の入院で出るのは30万円まで。手術をすれば、これに手術給付金などが加わる。
こうして見てみると両者の差は一目瞭然。終身払いでは毎月の負担額は小さくなるが、ずっと払っていくとなるとかなりの金額になってしまうことに驚くだろう。収入が年金だけになってからは、この負担は決して軽いものではないはずだ。
長生きすればするほど損をする仕組みになっているのが、終身払いの医療保険の実態なのである。こうした実態は、少し自分で計算してみれば、誰でもわかることなのであるが、現実的には、保険会社から薦められるままになってしまっているケースが実に多いのだ。
終身医療保険は、終身払いタイプと、○○歳払込済タイプを選択できる保険会社、終身払いタイプしかない保険会社があるので確認が必要である。
(文=長尾義弘/フィナンシャル・プランナー)