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衆院選勝利の岸田首相、安倍前首相の意向に背き距離…募る安倍氏のイラつき

文=編集部
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安倍前首相のインスタグラムより

 第49回衆議院議員総選挙の投票が31日に行われ、自民党は公示前から議席を減らしたものの、過半数を上回る261議席を獲得し、「絶対安定多数」とされるラインをクリア。野党第一党の立憲民主党が議席を減らし“敗戦色”が漂う中、岸田文雄首相(自民党総裁)は「信任をいただいた」と勝利宣言し自信をのぞかせる。

 そんな岸田首相の“生みの親”ともいわれる安倍晋三元首相は、衆院選期間中は公示日こそ2009年選挙以来という地元・山口県で迎えたが、その後は応援要請に応えて、東京、北海道、九州など全国を飛び回っていた。

 安倍氏が街頭演説に立つと、やはり聴衆は集まる。岸田首相より多いくらいで、安倍氏本人も歓声を浴びて満足気だった。しかし、胸の内は穏やかでないらしい。岸田政権は発足直後こそ、「安倍・麻生傀儡政権」「3A(安倍氏、麻生太郎副総裁、甘利明幹事長)政権」などと呼ばれたが、自民党執行部人事や閣僚人事は安倍氏の意向とは違った。そのことを今も安倍氏は根に持っているという。

「3Aの盟友の甘利氏が幹事長になったのだから満足しているのかと思われたが、安倍氏はどうしても高市早苗幹事長にしたかった。甘利氏は党の実権を握れば徐々に安倍氏の言うことを聞かなくなることを見通していたのだろう。同様に、官房長官についても、安倍氏は萩生田光一氏(経産大臣)にしたかった。松野博一官房長官は安倍氏の出身派閥の細田派ではあるものの、安倍氏とは距離がある」(細田派関係者)

 衆院選の公認候補選定でも安倍氏の意向が一部通らなかった。選挙区選出の現職(前職)優先だとして熱心に支援した細田派の尾身朝子氏が結局、群馬1区に残れず、二階派の中曽根康隆氏に選挙区を奪われ、比例北関東ブロックに回ることになった。安倍氏は、比例中国ブロックをめぐっても、引退した河村建夫元官房長官の長男が名簿上位で優遇されそうになると激怒。山口県連会長名で党本部宛に抗議文書まで出させて、河村氏の長男を中国ブロックから北関東ブロックへ追い出す一幕まであった。

「山口では、林芳正氏が参院から河村氏の地盤だった衆院山口3区に鞍替えした。地元では、『次は林総理だね』という期待感が膨らんでいる。長年総理として自分が注目を集めてきたのに、それが林氏へ移って行くことに、安倍氏は内心腸が煮えくり返る思いがあるはずです」(山口の政界関係者)

尾を引く「桜を見る会」問題と日大事件

 衆院選後には、いよいよ安倍氏が派閥に戻り、細田派を引き継いで領袖になるのが既定路線とされてきたが、それも「スンナリいかないかもしれない」との見方もある。自民党内最大派閥の細田派の正式名称は「清和政策研究会」。清和会や清和研と呼ばれるが、創設者は福田赳夫元首相であり、前身は安倍氏の祖父の岸信介元首相の岸派に連なる。

「そうした経緯から、清和会はもともと福田系と岸系の流れがあり、現在の派閥幹部の多くは福田系。安倍氏が派閥オーナーのように振る舞うことを苦々しく見ている人も少なくない。ここへきて、福田直系の3代目、達夫氏が党三役の総務会長に抜擢されたこともあり、安倍氏が派閥に戻るとなると、福田vs.岸の路線対立が勃発しそうな気配なのです」(前出の細田派関係者)

 そのうえ、「桜を見る会」の前夜祭をめぐって、安倍氏の元秘書が政治資金規正法違反で略式起訴された事件で、安倍氏についての捜査がまだ続いている。安倍氏自身は不起訴となったものの、検察審査会が「不起訴不当」を議決したため、東京地検で再捜査が行われているのだ。再びの不起訴確定で、すべての疑惑がクリアにならないと、安倍氏も今以上には動きにくい。

「日本大学付属板橋病院の医療機器納入をめぐる背任事件で逮捕された大阪の医療法人理事長と安倍氏は親密な関係だった。あの事件が長引くのも、安倍氏は嫌だろう」(自民党関係者)

 イライラが募る安倍氏。衆院選が終わっても視界不良だ。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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