第49回衆議院議員総選挙の投票が31日に行われ、投票が締め切られた20時、マスコミ各社は開票結果予想を速報した。
単独過半数(233議席以上)を獲得するかどうかが焦点となっていた与党の自民党は、公示前の276を下回るものの単独過半数を維持する勢い。連立を組む公明党と合わせて安定多数ライン(240台)を超える情勢で、今月4日に就任したばかりの岸田文雄首相(自民党総裁)は安定的な政権運営を見込めることとなる。
野党第1党の立憲民主党は公示前の110から少し議席を増やす勢いだが、伸び悩みが指摘されており、この4年間の活動に厳しい評価が下されそうだ。日本維新の会は公示前の11議席から3~4倍程度の大幅増という予想も出ており、公明党(公示前:29)と第3党を争う展開となった。
開票作業が進むなか、テレビ各局は選挙特番を放送。テレビ東京は恒例となったジャーナリスト・池上彰の“冠番組”『池上彰の総選挙ライブ』で独自かつ鋭い切り口で各政党のキーマンに切り込む。日本テレビは『news zero』でコンビを組む有働由美子と櫻井翔(嵐)をMCに据えた『zero選挙』、テレビ朝日は元NHKアナウンサーの大越健介とテレ朝アナの大下容子の『選挙ステーション2021』、フジテレビは人気アナの宮根誠司と加藤綾子をMCに起用した『Live選挙サンデー』を放送し、各局は安定感のある布陣で挑む。
そんななか異色なのが、TBSの『選挙の日2021太田光と問う!私たちのミライ』だ。選挙特番には初出演となる爆笑問題の太田光をメインに据え、『news23』キャスターの小川彩佳とTBSアナの井上貴博が脇を固めるという意欲的な試みをみせている。
自民党・甘利氏と激しい討論
同番組冒頭で太田は、番組名をコールする際に「池上(彰)、あ、池上じゃねえ」とさっそく“ボケ”をかまし、さらに自分の名前を名乗る際に「櫻井(翔)」と発言。かつて櫻井との交際が報じられていた小川を指して「小川さんがムッとしてる」とコメントし、スタジオの笑いを誘った。
その後、出口調査で自身の選挙区で2番手となり落選の可能性も出ている甘利明・自民党幹事長と中継がつながると、太田は「甘利さん、お元気そうじゃないですね。なんかあったんですか?」と話しかけ、「甘利さん、戦犯ですよね? もし(自民党が)負けたら」と畳みかけた。続けて、甘利氏がUR(都市再生機構)をめぐる口利き金銭授受疑惑が追及されている点が今回の苦戦の原因ではないかと問いただすと、甘利氏は「私はまったく関与していない。週刊誌で初めて全容を知った」と回答。すると太田氏は「それ、今まで通り“秘書がやりました”っていう同じ言い訳なんだけど」と指摘し、以下のように持論を述べた。
「自分の選挙事務所のカネの出し入れすらできなかったっていうのは、こんな人にね、経済再生なんか任せられるのかって、“この人、仕事できないんじゃないか?”って、そんな気がしたんだけど」
これを受け甘利氏は、TPP担当相時代にタフなTPP交渉をまとめたと強調。太田はその功績を認めながらも「俺は、政治家としての甘利さんの資質にがっかりしたというのもある。受け取ったのが100万円ごときでしょ、たかが」と追及の手を緩めない。甘利氏は、
「『大臣就任祝いに連れてきます』って連れてきて、就任祝いを。(金銭受領の)届け出をしたわけで、それは確認されているわけです」
と説明したが、太田は、
「それはさ、今まで通りの言い訳じゃない。その(100万円という)規模感って、日本経済をなんとかしようっていう、できるんですかって。そんな人に」
と疑問を呈した。
また、もし自民党が大幅に議席を減らした場合の党幹事長としての進退を問われた甘利氏は、「(自民党)総裁に身柄を預けなくちゃならないと思ってます」と言うと、太田は「総裁がOKって言えば、身は引かないという意味ですか?」と質問。甘利氏が苦笑いを浮かべながら「そういうことを聞く番組ですか?」と口にするも、太田は「そういうことを聞く番組なんですよ、これは」と応戦。最後は「ご愁傷様でした。はいどうも」と締めた。
「太田光の選挙特番めっちゃおもろいな」
この激しいやりとりを受け、Twitter上では以下のように太田の忖度抜きの追求ぶりに賞賛の声があがる一方、批判も続出する事態となっている。
<選挙について「戦犯ですよね?」と生放送で甘利に聞きに行く太田光マジでヤバい>(原文ママ、以下同)
<太田光の選挙特番が想像以上ですごい>
<すげぇ…爆問の太田さん 一切躊躇せずに裸の王様の自民の甘利氏をバッサリ切ってるwww いつもならテレビに出てくる自民党の政治家はみんな忖度に寄りかかってふんぞり返ってるけど TBSの選挙番組、大分期待できるぞコレw>
<選挙特番、tbsの太田光バカおもろい 甘利幹事長を攻めまくるw>
<太田光の選挙特番めっちゃおもろいな めっちゃズバズバ切り込んでる>
<太田光はどこでも太田光でテレビで観て笑ってる。選挙番組でこんなに笑うことなくない??>
<候補者をイライラさせまくってて草 池上彰よりよっぽどいい>
<TBS選挙番組は太田光最高だ!めちゃ鋭い質問しとるわ。>
<太田光のツッコミがすごい。池上の比でない>
<TBSがカオス>
<こんなにおもろい選挙特番はサイコー>
<太田 口のきき方が不愉快。だからチャンネル変えた>
<太田光の選挙特番をチラッと見たけど性格悪くて見てられない>
<太田は完全に田原と池上の物まねだけど、ただの酔っ払いの愚痴にしか聞こえん。なんだこの番組。選挙番組でもなんでもない>
<太田光 選挙特番のMCとして選ばれて張り切るのはいいが、人の話しちゃんと聞いてから発言しなよ>
<太田光の選挙番組 偏向がすぎるから変えた>
<太田光と甘利氏の中継にざわざわが止まらなくてテレビ消した…>
<番組の企画がよいだけに、太田さんの知識と質問準備不足を感じてしまってもったいない>
<太田光さん人の話は聞こうよ。だから山本さんの言うことがわからないんだと思う。薄っぺらい知識だけでなにかを主張する人がMCでいいのか??>
<ただただ太田光が不勉強で失礼極まりないだけやわ>
<太田光が色々ヒドイ件よ…失礼過ぎる>
テレビ局関係者はいう。
「池上の選挙特番は定評があるものの最近はマンネリ化も指摘されており、スタート当初こそ選挙特番の視聴率争いでトップをキープしていたが、ここ数年は他局に敗れることもあった。太田の政治家への追求は遠慮がまったくなく、失礼だとされるようなことまで平気で聞いており、その意味では池上を超えていると感じるし、視聴者的にも新鮮な印象を持ったのは確か。一方、ため口で失礼な質問を遠慮なく繰り出したり、足を組んで肘をついた姿勢のままで発言するなど不遜とも受け取られる態度にアレルギーを示す声もネット上では多いようなので、不透明な部分はあるものの、視聴率的にはテレ東を抜いて民放トップになる可能性もあるのでは」
番組内では、太田が自民党前幹事長の二階俊博氏に、いつまで政治家をやるつもりかを質問し、二階氏が「失礼だ」と怒る場面もみられるなど、政治家たちとの丁々発止のやりとりが続いた。
(文=編集部)