「一九××年、やまぎわ大志郎は南極に居た。当時、山口大学獣医学科に籍を置いていたやまぎわは研究対象である“鯨”の聖地で想像を絶する過酷な状況を体験をしていた」(原文ママ)
24日、経済再生相を電撃辞任した山際大志郎氏(自民党衆議院、神奈川県18区)の公式サイトにある同氏の“半生”を描いた漫画は、記事冒頭のように始まる。伝説の少年漫画『北斗の拳』(武論尊・原哲夫、集英社)を彷彿とさせるような“冒頭の時代・場面描写”に、国会担当記者は呆れたように語った。
「1995年に山口大学獣医学部に入学していることははっきりしていて、自身の年齢を25歳と記載しているのに、なんで南極にいた年を19××年とぼやかすんでしょう。
南極で想像を絶するような経験をしたのに、それが“いつだったのか”を覚えていない、ということなんでしょうか。意図的に”その年”を忘れているのか、覚えていられないのかどちらかはわかりませんが、今回の辞任劇はすべて山際氏のそうした“記憶力”に起因しています」
事務所の資料を1年で廃棄?
かねてから山際氏は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点を報道やネットなどで指摘されていた。
岸田文雄首相は8月の内閣改造を前に党内議員に対し、教団との関係を点検し、見直すよう指示。接点のあった閣僚はほぼ交代されたが、山際氏は教団との関わりについてあいまいな説明を続けた。教団との接点を明らかにしたのは留任が決まった直後で、一貫して「(山際氏の)事務所では1年をめどに資料を廃棄しており、過去の行動を確認できなかった」「記憶があいまい」などと不明瞭な説明を繰り返してきた。
中堅自民党衆議院議員秘書は「1年で資料を処分というのは……。どこの事務所も毎年膨大な量の資料がたまります。だから定期的に整理したり、処理したりしていますが議員が直接名刺交換をするなど、“接点”を持った相手の資料はちゃんと整理し、連絡先などのデータについては、在職期間中は保管しておくものです。良い意味でも、悪い意味でもなにかあるといけませんから」と語った。
山際氏は24日夜、官邸を訪れ岸田首相に辞表を提出。囲み取材で「教団と深い関係があったわけじゃない」「後追いの説明で(岸田首相ら政府首脳に)迷惑をかけている」「辞任はこのタイミングしかなかった」などと釈明した。最後に記者団に対し、「(自分が)閣僚でなくなると、みなさんも一般議員に取材することは減るのでは」と捨て台詞を残して去っていった。
岸田政権発足後初の閣僚辞任であり、安倍晋三元首相射殺事件に端を発した騒動は正念場を迎えつつある。そして、山際氏は今回の「想像を絶する過酷な状況」を記憶にとどめておくことができるのだろうか。
(文=Business Journal編集部)