本質的な理解があるかが問われる
――東大理系数学の入試問題の特徴と、そこに込められた東大側の狙いを教えてください。
土田 東大入試では、(1)基礎学力を測る問題、(2)思考力・洞察力が必要となる問題が出題されますが、東大の入試問題の特徴といえば(2)にあります。主に整数・確率の分野で独創的な問題が出題されます。これは、東大のアドミッション・ポリシーに描かれている「自ら主体的に学び、各分野で創造的役割を果たす人間へと成長していこうという意志を持った学生」を望んでいるからであり、「知識を詰めこむことよりも、持っている知識を関連づけて解を導く能力の高さを重視」しているからだと思います。とはいえ、高校数学の範囲を超えた知識や考え方が必要となるような難問奇問ではなく、試行錯誤しながらも無理なく解けるように工夫されている問題になっています。
しかし、本質的な理解をせずに、単純にパターン暗記をしていると、得点には現れにくいです。入試を突破するためには、本質的な理解があるかが問われます。にもかかわらず、相変わらずひたすら公式を丸暗記しようとする生徒が多いのは残念です。そもそも、丸暗記や、ひたすら問題集を解くだけでは学力は伸びません。これは、東大だけにいえることではありません。
数学の証明には、先人のひらめきがあります。そこを感じながら、自分なりに解いていくところに数学の醍醐味があるのです。東大合格も、小手先のテクニックに走るのではなく、教科書の内容をきちんと理解することが大切です。志望校の対策は、高3の秋以降で十分ですから、まずは計算力を高めること、そして、多様な項目を漏れなく押さえることです。処理能力とバランス力、それが合格への早道です。
――ちなみに、早稲田大学や慶應義塾大学といった私立トップ校と、東大の入試問題に特徴的な違いはあるのでしょうか。
土田 数学に関していえば、東大理科と早大理工(基幹・創造・先進)学部では極端な違いはありません。どちらも記述が中心で、問題を解く過程を重要視しています。一方、慶應大理工学部とは大きな違いがあります。慶應大は基本的に理系文系問わず、答えだけしか書かせませんし、とにかく量が多い。とても時間内に終わらない量が出題されます。処理能力を重視しているのでしょう。意図的に終わらない量を課すことで、どこまでできるかを見ています。