このように、当然ながら大学によって問題の傾向に違いはあるので、直前期には対策は必要ですが、前述の通り高3の秋くらいまでは基本をしっかり押さえることが大切で、その点ではどの大学を受験するにせよ、勉強法に大きな違いはありません。ただ、国立大学の場合はセンター入試が課されますし、科目数も多いので、他の科目とのバランスをとることが大事になります。そこが、私大対策との違いです。
――最後に、「自分は数学が苦手だ」と考えている受験生に向けて、アドバイスをお願いします。
土田 いったんすべてをリセットするくらいの気持ちで、ゼロから教科書の内容を確認していくというのも、ひとつの方法かもしれません。「こんなの知ってるよ」と思っていても、「公式を覚えている」というだけの学生も多いです。「なぜそうなるか?」を他人に説明できなければ、本当に知っているということにはなりません。公式を丸暗記しているだけでは、理屈を説明することはできないはず。「腹の底から納得する」ことを心がけ、本当にわかっているかを自問自答しながら進むこと。そうすることで、つまずきポイントがわかってくるはずです。
また、数学ができる生徒は自分の考え方をきちんと説明できるだけでなく、ほかの解き方も素直に受け入れて理解しようとします。できない子ほど、自分の考えに固執して「いや」「でも」といった否定的な言葉を使う傾向があります。逆に言えば、受かる子は客観的に物事を判断できる柔軟性があると感じます。
――ありがとうございました。
取材を終えて
東大理系の数学の問題が易しくなったというのは、数年前から一部教育界では話題になっていたが、その理由が「知識を詰めこむことよりも、持っている知識を関連付けて解を導く能力の高さを重視」というアドミッションポリシーを反映しているという土田先生のコメントに納得。「入試問題は、学校からのメッセージ」といわれるが、理系学部の数学という象徴的な科目での方向転換は、入試で燃え尽きるのではなく、入学後に力を発揮する学生を望んでいるというメッセージかもしれない。また、東大側の狙いとして、世間で言われている女子学生比率を3割にするという目標とともに、数学に強い私立中高一貫校出身者だけではなく、地方を含む全国公立校の生徒の入学比率を高めたいという狙いもあるのではないだろうか。
(文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト)