■スケジュール最優先主義によって起こる弊害
発注側はシステム開発をアウトソーシングした後、納品されたシステムは自社で運用するか、安価な業者に運用だけを任せることになる。ところが、これはシステムが一度完成した後、改修はほとんどしないという想定の元に行われている。「せめて運用は安く」という心理によるものなのだろうが、実は「ソフトウェア開発が高額になる」と原因の一つとなっているそうだ。
開発業者は何よりもスケジュールが最優先。そうすると、多少保守性が悪く、メンテナンスしにくいソフトウェアでもテストを通し、納品してしまうことがある。もちろん、どの企業も、プロとして「メンテナンスしやすい設計や実装」を心がけているが、プロジェクトの進行次第では、納期を最優先としてしまうのだ。
さらに、運用を別の業者に任せてしまった場合、自分たちで開発したシステムではないため、改修をするにしてもどれだけ影響範囲があるか見えないという理由から、文字を少し直すだけでも高い金額が発生してしまうということになるのだ。
「納品」という明確なゴールがあり、なおかつ「納期」というスケジュールが厳密に決まっている以上、その期間内で開発をするしかない。「ソフトウェア開発が高額になりがちな理由」はそういった構造的な問題として捉えることができる。
本書ではそうした問題を解決するためのビジネスモデルを倉貫さんが提示している。キーワードは“「納品」をなくす”ということだ。
システムは今や企業の活動においてなくてはならないものになった。だからこそ、本書で書かれている内容を知ることは発注側にとっても極めて大事なことなのではないだろうか。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。