NEW
吉田潮「だからテレビはやめられない」(10月27日)

あまちゃんブームのおこぼれ満載、“卑屈さ”際立つ新フジ月9連ドラ、隠れた見所とは?

【この記事のキーワード】

, , ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

『海の上の診療所』公式サイト(フジテレビHPより)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。  

 松田翔太が不憫なことになっている。まさかの「月9」主演で、こんな痛い目に遭わされるとは。まあ、そもそも“月9神話”は、とうの昔に終焉を迎えていたのだけれど。

 10月にスタートした今クール(10〜12月期)の連続テレビドラマ『海の上の診療所』(フジテレビ/毎週月曜21時放送)は、松田演じる優秀な総合診療医が離島を定期的に回る診療船に乗り、ほうぼうの島で恋に落ちるというストーリー。チャラくて女好きで惚れっぽくて、でも腕前は確か、みたいなよくある設定だ。

 同じ船に乗っているのが、ぼんやりしたゆとり世代系の看護師・福士蒼汰、事務長の荒川良々、エンディングには鉄拳のパラパラアニメ……。言わずもがなであるが、“あまちゃんブーム”のおこぼれ満載である。フジテレビのあまりの卑屈さに衝撃を受けた視聴者も多かったはず。いや、むしろあっぱれ。このブームを利用しない手はないわけだし、他局がフジだけを責められるはずもない。みんな乗っかっているのだから。テレビも雑誌も新聞も。劇中で福士に「じぇじぇじぇ」と言わせるあたり、恥も外聞もプライドのかけらもないのだけれど、視聴者の中には期待しちゃう空気も確かにあるわけで。

 松田の話に戻る。なんというか、松田の良さがちっとも活かされていない印象が強い。うっかりちゃっかりお調子者キャラで押していくよりも、自分がまったく見えず、空気を読めない痛々しさを前面に出したほうがうまくいくと思う。ほら、無駄にカッコイイから、ただ単に古臭くなるだけ。松田がフラれっぱなしというのも、イマイチ説得力がない。テヘペロ~みたいな松田は、役者として大損こいているようにしか見えない。

 どうしたらしっくりくるのか、いろいろと考えた結果、松田は同じフジテレビのドラマ『独身貴族』(毎週木曜22時放送)で主演するべきだったと思う。できれば松田龍平と兄弟共演で。そっちのほうが合っているし、松田兄弟のポテンシャルをがっつり引き出せたのではないか。で、余った伊藤英明をこっちの月9で引き取って、女好きの総合診療医に。海っぽいし、水っぽいし、すごくいいトレードだと思うんだけど。

 松田をことあるごとにド突いてはたくのが、看護師役の武井咲。元ヤンという設定は腑に落ちる。でも、それ以上でもそれ以下でもない。武井だからどうこう、というほどの役でもない。本来はこれくらいの記憶に一切残らない役が、武井に合っているのかもしれない。

 じゃ、このドラマの見所はどこにあるのか。個人的にはふたつあると思う。

 瀬戸内海の島々の美しさ。ここ最近、月9ドラマは海モノが多い。中身は惨憺たる状態なのだが、海だけはきれいなのだ。東京に住んでいると、きれいな海を愛でることがほとんどない。キラキラと輝く水面、瀬戸内独特の深みのある透明感、のどかに広がる段々畑……歯科医院とかエステで流れているような、ヒーリングのイメージ映像ね。癒されます。映像スタッフの皆様に感謝しております。

 もうひとつ。荒川良々と藤原紀香が夫婦で、サルサを踊るシーン。当然、ウケを狙ったシーンであり、笑うべきところだ。真っ赤なドレスで得意げに踊る紀香。荒川がいるからこそ、笑いの対象としての構図になるのだが、単体でみると違和感以外の何物でもない。

 今後、月9レギュラーともいえる戸田恵梨香が絡んでくるようだけれど、たぶん視聴率は美しい瀬戸内海と同様、凪だろうなぁ。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。