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江川紹子の「事件ウオッチ」第18回

【ろくでなし子さん再逮捕】不可解な要因は、警察のメンツと3Dプリンタへの警戒心?

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7月に釈放された際、記者会見で「私の身体はわいせつじゃない」として、「不当逮捕」を訴えていたろくでなし子さん。実際、海外メディアからは「女性差別では」との批判の声もあがっていたが、その後、ろくでなし子さんが発表した漫画作品によって、警察・検察がいかに3Dプリンターやクラウドファンディングの仕組みについて無知かも暴露された。

 「表現の自由とわいせつ」は古くて新しいテーマだ。だが、それにしても今回の警察の執念は、いささか異様に見える。

 女性器をモチーフにしたポップアートで知られるろくでなし子さんが、またもや警視庁保安課に逮捕された。今回は、女性向けのアダルトグッズ店を経営し、フェミニズムの視点から社会を見つめた著作で知られる北原みのりさんも、逮捕された。北原さんについては、検察の勾留請求を裁判所が棄却し、逮捕の翌々日には釈放されたが、ろくでなし子さんは、弁護人以外の面会を禁じる接見禁止の処分までついた勾留となった。

●問われる「わいせつ性」とは


 ろくでなし子さんの逮捕容疑は、

1)自身の性器を型どりして色づけした「わいせつ物」を、北原さんのアダルトグッズ店に展示した(わいせつ物公然陳列罪)

2)自身の性器を模したボートを制作する企画の出資を募り、協力者に対して自身の性器の3Dプリンター用データをメール送信した(わいせつ電磁的記録頒布)
など。

 (2)に関しては、7月に逮捕された時と同じ容疑だが、送信した相手が異なるという。

 だが7月には、勾留決定に対する弁護側の準抗告が認められ、釈放されている。つまり、ろくでなし子さんには逃亡したり罪証隠滅をしたりする恐れが認められず、この容疑での捜査では身柄拘束をする必要性がないと裁判所が判断したのだ。送信相手が異なるとはいえ、まったく同じ容疑で再度の身柄拘束をする、ということが許されていいのか、大いに疑問だ。

 (1)に関しても、そもそも身柄拘束までして取り締まるべき「わいせつ物」なのか、という疑問が湧く。

 逮捕後、警察が押収したろくでなし子さんの作品が、マスメディア向けに公開された。放送の際、強いぼかしがかかっているので、細かい形状は分からないが、ショッキング・ピンクや毒々しい緑や黄色といった強い色が目立つ。とても生身の人間の肉体を連想させるような色合いではない。

 取り締まりの対象とする「わいせつ」とは、「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義に反するもの」とされている。性器をかたどったとはいえ、こんなけばけばしい色の造形物が、警察の取り締まりを必要とするほど、人々の性欲を興奮・刺激せしめ、性的羞恥心を害し、善良な風俗を乱すのだろうか?!

 同じ表現でも、「わいせつ」にあたるかどうかは、時代や社会、あるいは展示などが行われる場所などによっても異なる。

 かつては、陰毛が見える写真や映像は御法度とされていたが、1990年頃から有名写真家による写真集が次々に出されるようになり、映画に関しても、ぼかしなどの修正が施されなくなった。週刊誌は、頻繁にヘアヌードのグラビアを盛んに売り物にしていたが、2000年代に入ると、もはやヘアが写っていることが、話題になることもなくなった。その意味では、性表現の幅は以前に比べて格段に広がった。

 とはいっても、警察は何らかの問題があれば、性表現に介入し、取り締まる姿勢は変えていない。2010年に有名写真家が青山墓地やデパートの前などで撮影を行って、礼拝所不敬と公然わいせつの罪で罰金30万円を課せられている。ただ、この時には写真家は逮捕されることはなく、在宅での捜査だった。

 一昨年には、英国人アーティストによる、様々な女性の性器をかたどってリアルに彩色した作品を紹介するカラーグラビアを掲載した週刊誌2誌に対し、警視庁保安課がわいせつ図画陳列罪にあたる可能性があると警告。昨年2月には、男性器をクローズアップした写真集を出したり写真展を行ったりしたシンガポール出身の写真家を逮捕した。今年9月には、愛知県美術館で行われた日本人写真家の写真展で、裸の男性2人が写っている作品について、愛知県警が「わいせつ物の陳列にあたる」と対処を求めたため、写真の下腹部を布で覆うことになった。