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16年にサラリーマンの残業代がゼロになる 危険な残業代ゼロ制度で年収大幅ダウン

文=溝上憲文/労働ジャーナリスト
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 企画業務型裁量労働制は高度プロフェッショナル制度と違って、年収要件はない。ということは、入社2~3年目の営業職が入る可能性もあるのだ。ちなみに独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査(14年6月)によると、企画業務型裁量労働制の対象者の年収は300~500万円未満の人が13.3%も含まれている。300万円といえば、20代前半の平均年収に近い。

●100万円以上の残業代が消える

 ではどのくらいの残業代が消えてなくなるのか、国の統計資料をもとに試算してみよう(詳しくは拙著をご覧いただきたい)。

 13年度の労働者の月間平均残業時間14.5時間。しかし、総務省の労働力調査(12年)によると、週20時間以上も残業している30~39歳は20%もいる。月間では80時間以上になる。仮に50時間の残業をした場合、31歳の平均基本給から計算した月間残業代は、11万6900円。35歳は14万1100円。39歳は16万9350になる。年収換算では、以下の金額になる。

・31歳:140万2800円
・35歳:169万3200円
・39歳:203万2200円

 これを見ても、いかにサラリーマンの生活が残業代に支えられているかがよくわかる。もちろん、企画業務型裁量労働制の対象になれば、みなし労働時間を何時間に設定するかで違う。仮に8時間を超える9時間に設定すれば、1時間分の割増手当が出る。それでも月に約22時間分だ。50時間残業している人にとっては、上の金額の半分以上が消えてなくなることになるのだ。もし、これだけの収入が減れば、暮らしは当然苦しくなるだろう。

 一方、経営側にとっては大幅な人件費の削減につながる。一般労働者の所定内賃金約30万円、月間平均残業時間14時間で計算すると、一人当たりの年間残業代は40万6350円。これに経済界が要望している労働者の10%である500万人を乗じると、全体で年間2兆円以上の削減効果があるのだ。

●世界的に見てもいびつな仕組み

 実は今回の法案が成立すると、法体系上も、世界的に見てもあまりにもいびつな仕組みというしかないものだ。

 高度プロフェッショナル制度という専門職の時間規制を外す制度は、世界でアメリカに次いで日本が2番目の導入国となる。業務の定義が極めて曖昧であるのに、対象者になると労働時間規制の適用除外となり、休日・深夜を含む時間外のすべての割増賃金が支払われなくなるという厳格な処遇が待っている。

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