健康食品、規制緩和で健康被害急増?届出制により安全性・有効性の審査が形骸化か
機能性表示食品が4月にスタート
「健康食品の機能性表示を解禁いたします」
4月から新たな機能性表示食品制度【編注1】がスタートした。安倍晋三首相は国民が健康を自ら守ると共に、特に資本力の弱い中小企業・小規模事業者のビジネスチャンスのために、米国の制度を参考に世界最先端の新制度をつくると胸を張り、このように宣言した【編注2】。
だが、科学的裏付けを欠く米国サプリメントを手本にした国の審査・許可不要の新制度で、果たして国民は健康になるのだろうか。
トクホと“いわゆる健康食品”の差
戦後の高度経済成長を経て飽食時代を迎えた1980年代、生活習慣病に関する啓蒙が進んだことを皮切りに健康志向が強まり、体調を整えるなどの食品の機能性にスポットライトが当てられた。一方で、医薬品まがいの健康食品が横行し、さまざまな健康被害が起きた。
そこで当時の厚生省は91年、健康食品の中で機能性を表示できる例外として、特定保健用食品(通称・トクホ)制度【編注3】をスタートさせた。トクホは食品の有効性(機能性)・安全性について国の審査を受けると共に、表示についても国の許可が必要だ。
2001年、トクホに次いで栄養機能食品制度が創設された。これはビタミンとミネラルの栄養成分の機能を表示できるが、トクホと違い、国の審査・許可は必要ない。
トクホと栄養機能食品の2つは、総称して保健機能食品と呼ばれる。健康食品の中からこの保健機能食品を除いた、錠剤・カプセル・粉末などの医薬品に似た形状のサプリメント、栄養補助食品や健康補助食品などは、通称“いわゆる健康食品”と呼ばれる。
トクホであれば、「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収を穏やかにします」などの表示が許されるが、“いわゆる健康食品”では、「毎日を健康に過ごしたい方へ」「いつまでも元気に歩きたい方へ」など、あいまいなイメージ的表現しか許されない。
企業と消費者とのトレードオフ
“いわゆる健康食品”に加え、野菜などの生鮮食品や一般の加工食品など、すべての食品の場合、(1)国が定めるルール(食品表示法の食品表示基準)に基づき、(2)企業の自己責任で食品の安全性・機能性に関する科学的根拠などの必要事項を、(3)販売予定の60日前までに消費者庁長官に届け出れば、(4)トクホ並みの機能性表示ができる――というのが、機能性表示食品だ。