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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」

健康食品、規制緩和で健康被害急増?届出制により安全性・有効性の審査が形骸化か

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

 だが、この米国の「ダイエタリーサプリメント」には重大な問題がある。米国保健福祉省監察総監室の12年の報告【編注5】によれば、次のようなことだ。

 同監察総監室が、体重減少・免疫機能に関する127の製品を対象に表示の適切さについて調査した。その結果、127製品について事業者から提出された557件の臨床試験データのうち、有効性に関する表示内容を実証するために重要な4点(表示とその根拠)のすべてについて考慮したと考えられるのは、1件もなかったという。

 また、20%の製品では禁止されているにもかかわらず、疾病に関する表示がなされていた。このほか、構造・機能表示の根拠として、30歳大学生の手書きの学期末レポートを提出した例もあるというから驚くほかはない。まさに科学的裏付けを欠くデタラメのオンパレードだ。

消化器・皮膚系が多い日本の健康被害

 一方、日本の“いわゆる健康食品”などの健康被害について、こんなデータがある。食品の新たな機能性表示制度に関する検討会の資料【編注6】によれば、09年4月~14年2月末に消費者からの申し出が約2700件(ただし、因果関係などは未確認)あった。

 特に消化器や皮膚系の事故情報が多く、「サプリメントを飲んで激しい腹痛、下痢、嘔吐で脱水症状になり、1 日入院した」「健康食品を購入して1カ月ほど飲んでいたら、顔に湿疹が出てきた」などのほか、治療に1カ月以上かかった例が167件あった。また13年の重大事故として、健康食品の1カ月服用による急性肝炎や、健診で薬剤性肝障害と診断されたケースもある。

“いわゆる健康食品”への期待と依存

 健康被害の多発にもかかわらず、14年3月、15~79歳の全国男女3000人対象の消費者庁の調査【編注7】では、興味深い結果が出ている。

 それによれば、調査前の1年間に健康食品を摂取した人は全体の4割以上(43.8%)で、(1)妊娠中・妊娠計画中、(2)20~64歳(なんらかの疾病あり)、(3)中学生以下の子どもに健康食品を与えている、(4)65歳以上の高齢者の順で多かった。

 摂取した健康食品の種類は全体でトクホが4割以上(44.7%)で、次いで“いわゆる健康食品”が4割近い(38.4%)。

 なぜ“いわゆる健康食品”を摂取するのだろうか。“いわゆる健康食品”に関する次の4つの質問に対し、「とてもそう思う」と「そう思う」を合わせると、いずれも全体のうち(1)食事で摂取しにくい栄養成分を摂取できる(70.2%)、(2)摂取で健康維持(53.8%)、(3)摂取で病気予防(46.5%)、(4)試験などで安全性が証明(41%)と、肯定的な回答の比率が高い。健康被害をよそに、健康不安に駆られて“いわゆる健康食品”に期待し、依存する人が多いようだ。

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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