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10年、裁判員裁判の死刑求刑事件において全国で初めて出された無罪判決でも、鹿児島県警による証拠採取の信用性が問題とされ、「後に採証過程の信用性を争われる可能性があることを見越して写真撮影するなど証拠を保全しておくべきであった」「採証活動には丁寧さと慎重さが求められて然るべき」と繰り返し注文を付けられている。
こうした指摘を受けて、これまでの証拠の採取・作成過程を見直し、改善するということを、同県警はしてこなかったのではないか。
今回の事件で検察は、控訴審で裁判所の委嘱で法医学者が行ったDNA型鑑定で、女性の体内にあった精子は別人のものだと明らかになるや、密かに鑑定試料を別の大学に持ち込み、再鑑定を行った。その試料を運搬したのは、警察段階で鑑定を行った鹿児島県警のA技官だった。こうした行為に対して福岡高裁宮崎支部は、「必要性も緊急性もないのに、非代替的な試料を無意味に費消した」うえ、公判中心主義の理念にも反すると、検察側を厳しく非難した。
検察もまた、09年の「郵便不正事件」で大阪地検の主任検事が証拠改ざんを行った不祥事をきっかけに、そのあり方が厳しく問われ、自ら倫理規定「検察の理念」も策定した。そこでは、「あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない」と謳っている。この時の反省と誓いは、もう忘れ去られてしまったのだろうか。
過去の失敗を繰り返さないためには、客観的な目で事件を検証し、警察、検察、弁護人、裁判所のどこにどのような問題があったのかを分析し、それを各組織が研修の教材にするなどして生かしていく、ということを地道にやるしかないのではないか。そのためにも、冤罪について第三者が検証する制度を設け、原因を分析し、その教訓を捜査機関や弁護士、裁判所が学べるようにすることを、そろそろ本気で考えてもらいたい。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)
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