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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

分裂するヨーロッパ…EU、英国離脱で一気に解体か

文=渡邉哲也/経済評論家
分裂するヨーロッパ…EU、英国離脱で一気に解体かの画像1「Thinkstock」より

 今、ヨーロッパが揺れている。

 EU(欧州連合)や共通通貨・ユーロの導入でひとつになろうとしてきたヨーロッパだが、2010年からのギリシャ・ショックに続き、昨年には難民問題も発生したことで、もはやバラバラになりつつあるのだ。

 ヨーロッパが統合に向けて動いてきたのは、超大国・アメリカに対抗するためである。約3億2000万の人口を持つ巨大マーケットであり、世界的な金融支配を行うアメリカに対抗するには、もはや一国だけの力では不可能だ。

 そこで、ヨーロッパ全体がひとつになることによって、約5億人ともいわれる一大マーケットをつくり上げ、強大な経済体としてアメリカに対抗する。そうした文脈で生まれたのが、EUであり、ユーロであったといえる。

 また、かつて西側諸国の敵であった旧ソビエト連邦が崩壊したことも、ヨーロッパがひとつにまとまる大きな要因となった。旧ソ連がなくなったことで、ヨーロッパ諸国はアメリカの軍事力の傘の下に入らなくても済むようになったからだ。

 しかし、その統合体制も、14年3月にロシアが半ば強引にクリミア半島を編入したことによって、大きく変化することになった。また、同時にヨーロッパ自体の大きな欠陥が露見したことで、今ヨーロッパは分裂に向けて動きつつあるのが現状だ。

 その欠陥の典型が、ギリシャ問題だ。同じユーロ導入国であっても、国の状況はさまざまで、ドイツ・フランスとギリシャのように、国家間に大きな経済格差のあるケースも少なくない。もともと、文化的にも民族的にも別々の国だったわけで、当然といえば当然である。

 それら別々の存在を統合しようとする時、必要になるのは「絶対的な力」か「絶妙な力のバランス」である。しかし、近年のギリシャ問題によって、ヨーロッパの力のバランスは崩れ始めたことが露見した。

 08年に発生したリーマン・ショックによって、ヨーロッパの金融市場は大きなダメージを受けた。そのため、ヨーロッパの金融資本はリスクの高い新興国から安全な国、つまりドイツやフランスなどの大国に逆流することになった。

 そのあおりを食うかたちで、ヨーロッパの経済弱者の国が破綻危機に瀕し、それらの国々を指す「PIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)」という総称まで生まれた。

 ずっと借りられると思っていたお金を「すぐに返せ」と言われて、すぐに返せる人はいない。しかし、現実にはリーマン・ショックによって「ずっとお金を借り続けることができる」という幻想が崩壊してしまった。そのため、経済危機が連鎖したというのが、10年頃にヨーロッパを襲った、いわゆるソブリン危機の背景なのである。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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