金利以外の要素にも目を向ける必要がある
「住宅ローンの金利が低いので申し込んだら、当初の融資手数料がべらぼうに高いことがわかってやめた」「反対に融資手数料が安いと思ったら、金利が高くて結果的に損しそうで迷っている」――そんな困惑の声があります。
住宅金融支援機構と民間機関が提携して実施されている住宅ローンの「フラット35」には、融資手数料の「定率制」と「定額制」があります。定率制は、借入額の2%前後など、借入額に一定割合を掛けた金額が手数料になり、定額制は3万2400円、5万4000円など、借入額にかかわらず金額が決まっています。
金利が低い「定率制」と手数料が安い「定額制」
両者の違いをひとくちでいうと、定率制は当初の手数料が高いけれど、その分金利が低く、定額制は当初の手数料は安いけれど、その分金利が高い――ということになります。
たとえば、大手金融機関のなかでは比較的金利が低いりそな銀行の2016年1月の金利をみると、35年返済の場合、定率制が1.54%で、定額制が1.76%です。これだけみれば、定率制の1.54%がトクだと感じますが、定率制の手数料は借入額×1.836%。借入額3000万円だと55万800円の負担になります。それに対して、定額制は借入額にかかわらず一律3万2400円ですみます。利用者からすれば、以下のどちらかの選択になります。
・多少手数料が高くても、金利が低くて毎月の返済額が少なくなる定率制
・多少金利が高くなっても、当初の手数料負担が少ない定額制
実際の総負担を考えた場合、どちらがトクなのでしょうか。いくつかシミュレーションしてみましょう。
返済期間が長いほど定率制が有利になる
まず、35年返済でみると、図表1の(1)にあるように、定率制の金利は1.54%で、毎月の返済額は9万2444円。対して、定額制の金利は1.79%に上がり、返済額は9万5723円になり、月額3000円近い増額です。一方、当初の手数料は定額制なら3万2400円ですが、定率制だと55万800円になります。
どちらがトクなのか悩ましいところですが、35年間の返済額に当初の手数料を加えた総支払額でみてみましょう。
その結果、定率制は約3938万円に対して、定額制は約4024万円と定率制のほうが86万円ほど少ないことがわかります。返済期間が長いと金利の低さが効いてきて、定率制のほうが当初の手数料が高くても、総支払額で有利になるわけです。