梅が咲く季節になっても、寒い日には鍋を囲みたくなります。おいしい鍋に豆腐は欠かせないものです。
ところが、3丁100円くらいの安い豆腐を鍋に入れると、煮るほどに鍋の表面に浮かんできます。食べてみると、スポンジ状に“す”が入っていてスカスカになっています。
「煮すぎてしまったからしょうがない」とあきらめてはいけません。豆腐には、煮れば煮るほどスカスカになるものと、逆に軟らかくなるものの2通りあるのです。
にがりは、成分表示欄に「塩化マグネシウム(にがり)」「塩化マグネシウム含有物(にがり)」「粗製海水塩化マグネシウム(にがり)」といった表記がしてあります。
一方、煮るとスカスカになってしまう豆腐は、凝固剤にGDL(グルコノデルタラクトン)を使用しています。
大豆のおいしさ
お年寄りのなかに「昔の豆腐は硬くておいしかった」と言う方がいます。戦時中、にがりは軍需品だったため、豆腐に使う凝固剤は主に硫酸カルシウムでした。硫酸カルシウムを使用すると、舌触りの良い軟らかい豆腐ができるため、以降しばらくそれが主流になりました。一方で、食感だけは良く大豆のうまみが少ない豆腐が多く流通しました。確かに現代でも、軟らかくて大豆のおいしさを感じないものがあります。
豆腐は大豆、水、凝固剤からつくられます。豆腐メーカーはおいしい水を求めて工場を建てるので、おいしい水の出るところに豆腐メーカーがあります。逆にいえば、おいしい豆腐メーカーのある地域の水はおいしい場合が多いのです。
昔の豆腐店は、にがりを用い、大豆を多く使って豆腐をつくっていました。1俵(60kg)の大豆から400丁程度しか豆腐をつくることができませんでした。ところが、GDLを使用した3丁100円くらいの豆腐は、1俵の大豆から700丁以上の豆腐をつくることができます。ただし、味は薄くまずくなってしまいます。