2014年11月、安倍晋三首相は2015年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げ時期を、1年半延期することを発表した。これにより引き上げ時期は、17年4月となった。安倍首相が引き上げ時期を延期することが可能だったのは、まだ民主党政権だった時に決まった消費税引き上げ法案に景気条項がついていたからである。
景気条項というのは、消費税率の引き上げに当たり、景気の状況により引き上げ時期の延期や停止といった適切な措置を講じることを求めたもので、安倍首相はこの条項に従って引き上げ時期の延期を決めたのである。
しかし、17年4月へと延期された消費税率の引き上げには景気条項がついていない。そのため、引き上げ判断のタイミングで余程のことが起きていない限り、17年4月には消費税は10%に確実に引き上げられることになっている。
問題は、この引き上げ判断の時期まで景気回復が続いているかどうか、という点である。消費税率引き上げによって、14年度のように景気の腰を折ってしまうような結果にならないか、誰しもが心配するところである。
景気の山と谷
もちろん、今の段階では消費税率引き上げ判断時期の景気がどうなっているかは誰にもわからない。ただし、過去の経験則に照らし合わせて考えてみることはできる。
景気はいい時期と悪い時期が循環して現れる。この景気の循環を、内閣府は1951年6月以降、景気のピーク(山)と底(谷)として認定している。
このデータによると、景気の回復期は最長がいざなみ景気の時の73カ月で、最短は前回の第16循環で14カ月と非常に幅がある。試みに回復期を平均すると36.0カ月、つまりちょうど3年ということになる。直近の第16循環は12年11月に底を打っているため、そこから3年というと15年12月となり、ちょうど昨年末の株価がピークアウトしたタイミングと重なる。
その場合、景気後退がきっかけとなって、消費税率引き上げが再び先送りされることにもなりかねない。ただ、最短だった第1循環の4カ月のほかにも、前回第15循環の時も8カ月しか後退期は持たなかったため、17年4月の消費税率の引き上げ判断のタイミングまで後退期が続かない可能性もないわけではない。また、次の引き上げには景気条項がついていないため、単に景気が後退しているだけでは、消費税率の引き上げは断行される可能性もある。しかしその場合、景気後退期に消費税率を引き上げ、後退期間を長引かせるという最悪の状況をつくりかねない。