地面に散乱する大量の日本製化粧品を、途方に暮れた様子で拾い集める女性たち。これは4月8日、中国上海浦東空港の第1ターミナルで撮影され、中国版Twitter「微博」に投稿された写真である。
中国ではこの日より、海外で購入した物品を国内に持ち込む際に課せられる「行郵税」の税率が一新され、同時にこれまで存在した免税枠が廃止された。
例えば、以前までは化粧品にかかる行郵税は、商品価格100元(約1700円)相当までは免税で、それ以上については価格の50%が課税されていた。しかし8日以降は、一律32.9%が課税されることとなったのだ。ちなみに行郵税は、帰国者の手荷物だけでなく国際郵便で国内に持ち込まれる物品に対しても適用されている。
同時に、税関での持ち込み荷物の開封検査も徹底されたようだ。上の写真はまさに、税関職員によって荷物を“全開”にされ、隈なくチェックされた直後の帰国者を捉えたものなのだ。
昨年9月からは、税関の虚偽申告に対する罰則も強化されている。税関当局は、手荷物や郵便物の税関申告書に書かれた内容物の価格が、実際の価格よりも10%以上低かった場合、密輸品として没収する可能性もあるとしている。
こうした関税の厳格化が、中国人の海外での爆買い行為を終焉させる可能性について話すのは、中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏だ。
「今回の課税強化の目的は、中国政府からすれば『取れるところからは取る』というもので、爆買い封じ込めというわけではない。ただ、小口での個人輸入やハンドキャリーで持ち込む物品にももれなく課税されるようになれば、わざわざ日本で爆買いしたり、転売業者による並行輸入品を買ったりする意味はなくなるでしょう。化粧品や家電製品など、中国人の爆買い対象となっている製品の多くは、中国国内でも正規輸入品が売られており、それらを買っても価格的に大差なくなるからです」
中国での日本製品人気が衰えることはなさそうだが、日本のドラッグストアや家電量販店、百貨店などが受けている中国人による爆買いの恩恵は、立ち消えとなってしまうかもしれない。
(文=編集部)