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三菱自と日産の両トップ、不正公表直前に面談か…極秘裏に計画された「買い叩き」シナリオ

文=編集部
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三菱自と日産の両トップ、不正公表直前に面談か…極秘裏に計画された「買い叩き」シナリオの画像1カルロス・ゴーン日産自動車社長(左)と益子修三菱自動車会長(UPI/アフロ)

 5月4日付当サイト記事『三菱自、倒産が現実味高まる…名門没落の元凶「A級戦犯」の院政、御曹子社長の失態』において、三菱自動車工業の相川哲郎社長が引責辞任するとの見方を報じたが、この流れが固まった。

 相川氏は、6月24日の株主総会で辞任する。5月18日の記者会見で「不正のあった期間に開発のトップを務めていた責任を取る。私が社長として残っていては改革の妨げになる」と述べた。引責辞任するのは相川氏と開発担当の中尾龍吾副社長。中尾氏は相川氏と社長の椅子を争った人物だ。中尾氏が退いた後の開発部門のトップは、日産自動車から送り込まれる。

 益子修会長は日産のカルロス・ゴーン社長兼CEO(最高経営責任者)と「ウイン・ウインの関係」であることから、会長兼CEOに留任し、今秋、日産による34%の出資が完了するまで暫定的に社長を兼務する。

 日産は、三菱自が6月24日に開く定時株主総会後に、開発部門のトップとして取締役を派遣する。とりあえず派遣する役員は1人だが、三菱自の取締役は現在の13人から11人に減る。11人のうち、会長を含む取締役4人を日産が出す予定だ。

三菱自、益子氏が社長に返り咲き?

 日産が出資した後の新体制について、会長はカルロス・ゴーン氏が兼務するとの予想も多かったが、1カ月の間に日本にいるのが10日間程度のゴーン氏が会長を兼務するのは難しいとの見解が今は大勢を占めている。その場合は、西川廣人代表取締役CCO(最高顧客責任者)が送り込まれる可能性がある。西川氏は、三菱自の再建に成功すれば、“ポスト・ゴーン”にさらに一歩近づくことになる。

 社長には益子氏が返り咲き、さらにCEOを兼務するとみられる。5月14日付朝日新聞のインタビューでゴーン氏は、「三菱自のCEOは信頼する益子氏が続ける方がはるかにパワフルだ」と語っている。会長は日産が出すことから、ゴーン氏のこの発言通りなら益子氏が社長に返り咲いてCEOを続けるとみられる。三菱商事から今春、三菱自の常務執行役員になった白地浩三氏が専務に昇格して益子氏を補佐する可能性もある。

 益子氏は、会長を続投しつつ社長を兼務する理由を「日産との資本提携に向けた交渉を行うこと。提携のシナジー(相乗)効果の見極めをする」ためとしている。

 益子氏は、6月24日の株主総会後に予定していた監査等委員会設置会社への移行を取りやめたことも明らかにした。これらはすべて、日産の出資が完了した後のことになる。

 三菱グループ内には、日産が三菱自の株式の34%を2373億円で買い取るという合意内容に「金額が低すぎる」との不満が出ている。ゴーン氏との決着を急ぐ益子氏は、グループ主要各社のトップを訪ね、5月11日にやっと了承を取り付けた。そのため、5月13日に開催された三菱グループの最高決定機関とされる「金曜会」でも「売却価格が安すぎる」といった批判が出ると予想されたが、冒頭で相川氏が硬い表情で「ご迷惑をかけて誠に申し訳ありません」と謝罪し、足早に退席した。金曜会ではその後、三菱自に関する話題は出なかった。

 金曜会のメンバーの1人は、「確かに安すぎる。しかし、余計なことを言って、『じゃあ、あなたが(三菱自動車を)引き受けてください』といわれても返答に困る」と本音を語り、金曜会の現在の雰囲気を「重い沈黙」と表現した。

 確かに今回の買収価格は安い。ゴーン氏は三菱自の株価が問題発覚直前の半値近くまで下がった時点で、益子氏に即決を迫った。資本・業務提携の噂が広がるだけで三菱自の株価は急騰する。そうなったら安値で買えなくなると判断したゴーン氏は、益子氏に早期決着を迫ったわけだ。

 5月12日の記者会見でゴーン氏は「私どもは世界トップ3に入る実力がある」と言い切った。三菱自との資本・業務提携発表直後に、日産の16年3月期決算を発表したが、この席でゴーン社長ははっきりと三菱自を傘下に収める狙いを語っている。

「日産は世界最大市場の中国で、日本メーカーの首位だ。米国では(日本メーカー)2位になって『ホンダ超え』を果たした。日本(国内)で3位とか4位というのはおかしな話だ」

「中国の自動車メーカーが三菱自動車を買収する意向」との情報をキャッチしたゴーン氏が、いち早く先手を打ったとの見方が自動車業界を駆けめぐった。ところが、欧米の投資銀行の幹部は「三菱自動車を買いたいと動いていた中国の自動車メーカーはなかった」と証言している。

 ゴーン氏と益子会長は、4月20日の軽自動車燃費不正公表前に会っており、益子氏は20日に公表することを伝えていた。2人が極秘裏に今回のスキームを固めたという説を裏付ける事実だ。

菅官房長官と日産、異様な関係

 日産の川口均専務執行役員は5月12日、首相官邸で菅義偉官房長官と面会し、三菱自の株式を取得して筆頭株主になる方針を説明した。川口氏は面会後、記者団に「今日、両社の取締役会が開かれて、そこで色々決定される」と述べた。

 日産が菅長官に三菱自への資本参加を発表前に報告したのは異例だ。日産の本社は菅長官の選挙区内にあり、菅長官は日頃から日産の企業活動には関心を示している。それゆえの事前報告だが、前例のない事態といえる。大型のM&Aの場合、経済産業大臣経由で情報が首相に伝えられることはあるが、当該企業の役員がわざわざ官邸を訪れて報告するというかたちは極めて異例である。

 今回、三菱商事が日産の資本参加の根回しに奔走したという情報がある。御三家の中で、日産の傘下に入ることに前向きだったのは三菱商事だが、奔走したというのはいささかオーバーだろう。

 三菱商事は3月末時点で三菱自向けの投融資残高が3350億円と多く、アジア市場での販路開拓や新工場の建設などを支援してきた。三菱商事は「(日産の傘下に入る)再建策を歓迎している」とのコメントを出した。三菱東京UFJ銀行も「前向きに捉えている」とのコメントを出したが、かなり温度差が感じられた。

 ゴーン氏は「三菱グループの力を活用したい」と言っている。三菱商事が40%出資する三菱自の新工場は、2017年にインドネシアで稼働する。日産が三菱商事の出資の一部を肩代わりして、現地で売れる筋の小型多目的車を日産ブランドで生産するプロジェクトを提案するとみられている。
(文=編集部)

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