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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

大学病院と医学学会が、日本の医療と若い医師を破壊し始め…新専門医制度という愚策

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「Thinkstock」より

 新専門医制度が揉めている――。

 7月20日、一般社団法人日本専門医機構は、新制度の開始を2018年4月とし、1年間延期することを決めた。

 従来、専門医資格は内科や外科などの学会が独自に認定してきたが、新制度では第三者機関である日本専門医機構が統一的な基準を設け、専門医の質を評価することになる。日本専門医機構の素案では、専門医を目指す医師は大学病院を中核とする拠点病院を中心に、地域の協力病院と連携して経験を積まねばならない。内科や外科では、循環器内科や心臓外科などの専門医になるため、数年間、内科や外科全般を研修することが義務づけられる。

 専門医資格の取得条件として、幅広い知識と豊富な経験を求め、第三者がその質を検証する。お題目は立派だ。ただ、この制度は重大な問題を抱え、多くの関係者が批判している。

 特に、指導・研修のために医師が都市部の大病院に集中し、地方の医師不足が加速する可能性が高いことは、重大な懸念材料だ。日本専門医機構は、朝日新聞の取材に対し「都市部の大病院で専門医の研修を受ける医師らが集中しすぎないように、施設ごとの定数を学会と調整する」と回答しているが、実効性に疑問が残る。

 南相馬市立総合病院の森田麻里子医師(28)は「研修プログラムの要件緩和や、地域を回る期間を少し長くするといった付け焼き刃的な修正で、済ませてほしくない」と批判する。

 私も同感だ。この問題は根が深い。高齢化が進むわが国で、どのような専門医が必要か、それを育成するにはどうすればいいか、多くの専門家や国民を巻き込んだ議論が必要だ。日本専門医機構という任意団体の理事会で決めるべき話ではない。

専門医資格と大学病院


 専門医制度を議論するうえで大切なことは、これからの専門医に求められることは何か、じっくりと考えることだ。

 これまで、専門医は大学病院を中心に育成され、教授たちが仕切る「学会」が認定してきた。今回の専門医制度の見直しも、教授たちが主導した。日本専門医機構の幹部の大部分が教授か教授経験者だ(最近、理事に数名の一般人を追加した)。

 ところが、肝心の大学病院の競争力が低下している。たとえば、朝日新聞出版社の調査によれば、13年度に胃がんの手術数が多い病院は、がん研有明病院(1417件)、静岡県立静岡がんセンター(1348件)、国立がん研究センター中央病院(1310件)、国立がん研究センター東病院(867件)と続く。

 大学病院でもっとも手術数が多かったのは、埼玉医科大学国際医療センター(204件)で全国7位だ。ちなみに、私の母校である東大の付属病院は611件で16位である。