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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

老後「住宅格差」、カネ次第のエゲツない実態…洗面所・浴室共同で学生アパート並みも

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
老後「住宅格差」、カネ次第のエゲツない実態…洗面所・浴室共同で学生アパート並みもの画像1サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム(「国土交通省 HP」より)

 1戸当たり最大100万円の補助金が出ることもあって、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が増え続けています。筆者は取材、見学などに訪れることが多いのですが、その内容は千差万別でピンきり、各施設の間には雲泥の差があって、まさに「サ高住の沙汰も金次第」と考えさせられます。

国土交通省マターの「住宅」としてスタート

 わが国では、有料老人ホームなどの高齢者向け「施設」の数は欧米先進国レベルに達しているものの、高齢者向けの「住宅」はまだまだ不足しています。この高齢者向け住宅の確保という点から2011年にスタートしたのが、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)です。

 高齢化社会の進行につれて新築住宅の減少が避けられないため、国土交通省としては高齢者向けの分野に本格的に参入、その存在感を維持しようとする狙いがあったともいわれています。

目標の100万戸まではまだまだ遠い道のり

 ともあれ、そうした狙いから建設に当たっては1戸当たり100万円を上限とする補助金制度が創設され、あわせて所得税・法人税、固定資産税や不動産取得税の優遇措置が実施されたこともあって、急速に増加しました。

 図表1・2をご覧ください。累積棟数は15年末に5000棟を超え、累積戸数は16年に入って20万戸を超えました。しかし、それでも安倍政権が目標に掲げる100万戸にはほど遠く、今後も各種の支援策が継続され、ますます建設に拍車がかかるものとみられます。

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原則25平方メートル以上、台所、トイレ付きだが

 国の補助金を投じるわけですから、一定の水準を確保した住宅でなければなりません。図表3にあるように、専用部分の床面積は原則的に25平方メートル以上で、各戸に台所、トイレなどを備えている必要があります。

 しかし、これには「ただし」というただし書きがついています。入居者が共同で使用できる設備があれば、25平方メートル以下でも、また居室に台所、浴室などはなくてもいいことになっているのです。

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25平方メートル以上の住戸の割合は4分の1以下

 図表4をご覧ください。これまでのサ高住の住宅の専有面積をみると、20平方メートル未満が半数を超え、25平方メートルという原則をクリアしている住戸の割合は4分の1以下にとどまっています。

 トイレ、洗面についてはほぼ100%設置されていますが、キッチンがついているのは38.4%で、浴室は22.6%にとどまります。

 つまりは、多くのサ高住の住民は20平方メートル前後の狭い部屋で、キッチンや浴室は共同という、一昔前、二昔前の学生アパートのような生活を余儀なくされているといっていいでしょう。

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