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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

間違った介護や徘徊老人への対応、極めて危険…大怪我をさせ多額の損害賠償支払うハメに

文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表、保険・介護・医療ジャーナリスト
間違った介護や徘徊老人への対応、極めて危険…大怪我をさせ多額の損害賠償支払うハメにの画像1「Thinkstock」より

 先日、筆者は徘徊高齢者を発見した。保護から家族に出会うまで、約30分の超スピード解決となった。わずかの時間とはいえ、得た教訓は大きいものだった。徘徊は社会問題として、たびたび取り上げられる。一方で、専門家の意見を交えて多角的に徘徊の問題を論じられることは少ないように思える。そこで今回は包括的にそれを考察する。

“白い人”と遭遇

 街はようやく眠りから目覚めようとしていた。筆者はコンビニエンスストアで、ぼんやり外を眺めながらコピーをしていた。早朝の街を行き交う人は、ほとんどいない。すこし先の横断歩道を、白髪頭の“白い人”がヨタヨタとしながら渡っているのが見えた。「危なっかしいけど、青信号の間に、渡りきることができるのだろうか?」と気になりながらも、コピーを続ける。わずかばかりの枚数のコピーは、すぐに終えた。

「先ほどの“白い人”はどうなっただろう?」

 私はその人をなにげなく探したが、横断歩道にもうその姿はなかった。「無事に渡ったんだ」とほっとしたのも束の間、横断歩道から10メートルほど先で、“白い人”がうずくまっている。うずくまっていたのは、歩き疲れたからなのか、急激な体調悪化か。片付けもそこそこに“白い人”の元へ全力疾走をした。春とはいえ、薄手のコートを羽織らないとまだ肌寒い。それなのに“白い人”は、半袖・七分丈の服装だ。

 どれぐらいの距離を“白い”人が歩いてきたのかわからないが、あの調子なら結構な時間が、かかっているに違いない。となると、高齢の方なので、寒さで体力を奪われていることは十分に考えられる。ともかく、ただのお散歩ではないようだ。近づいて、その“白い人”がステテコ下着姿であることに気づく。

 少しの休息で回復したのか、自分で起き上がろうと何度かトライもされてはいるが、身長の割には結構な重量感があるからか、立とうとしても、なかなか立ち上がれずにいる。私の頭の中に徘徊という言葉が駆け巡る。走りながら、「どこにも行かないで」と心の中で叫ぶ。

 同時に、「困った」と思った。私は介護職員初任者研修の資格を持っているが、徘徊老人を見つけた時の対処方法は、授業にはなかったからだ。「どう話しかければいいのか。何を言えばいいのか」と戸惑いながら、“白い人”の前に立った。だが、それは杞憂だった。自然に座り込み、「おはようございまーーす」と声を掛けた筆者に、天使のようなかわいい笑顔を返してくださった。65歳以上のお歳だろうか。

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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