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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

間違った介護や徘徊老人への対応、極めて危険…大怪我をさせ多額の損害賠償支払うハメに

文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表、保険・介護・医療ジャーナリスト

「大丈夫ですか?」と聞いて、「しまった」と思った。経験上、「大丈夫ですか?」と聞くと、「大丈夫」と答える方が多いからだ。ぱっと見では、特にケガをしている様子もない。「どこか痛いところはありませんか? 寒くはないですか? 転ばなかったですか?」と、一つひとつ聞き直した。そのたびに、首を振っては、ただニコニコとされている。どうやら障害をお持ちで、会話を交わすことは難しいようだ。

「やはり徘徊中だ」と確信した。ラッキーなことに2軒隣が警察署だ。自力で立つのが難しいことがわかっているので、「ここに居てくださいね。すぐに人を呼んできます。すぐに戻ってきます」と何度も言い、警察に駆け込んだ。「徘徊中の下着姿の高齢者がうずくまっている」と聞いた警察の方も、筆者とともに全速力で現場に戻る。たった2軒先なのに、果てしなく遠いように思えた。

 筆者たちの顔を見ても、その方(以下、Aさん)はニコニコと笑っていた。警察官は「おはようございます」と声をかけながら、健康状態に緊急性があるかどうかを見極めているようだった。そして、「ここは寒いから、すぐ隣に警察があります。そこに行けば暖かいから、移動しましょうか?」と促した。ありがたいことに、にっこり笑って手をさしのべてくれた。

 手をさしのべられたら、その手を握り、体を起こすために引っ張り上げたいものだ。しかし、これは非常に危険だ。大人対大人で、しかも体重のある人が座り込んでいるのを助けようとした場合、助けようとした人が引きずられ、ともに倒れ込むか、座り込んでいる人が後ろに転倒してしまい、頭を打つなどして大怪我を引き起こしかねない。「良かれ」と思ってしたことが、相手に大怪我をさせてしまい、損害賠償を請求されるような事態になっては、本末転倒になってしまう。

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 ちなみに、日常生活中に誤って第三者にケガをさせたり、壊してしまった場合に備える保険商品としては、損害賠償責任金が支払われる「個人賠償責任保険(特約)」、保険会社によっては「日常生活賠償特約」などが発売されている。

 前者は一般的に自動車保険や傷害保険、火災保険などの特約として契約するが、クレジットカードにセットされている場合もある。最近では2013年、自転車に乗っていた小学生が女性に重篤なケガを負わせた裁判で、小学生の親に9500万円の賠償金を命じる判決が下って以来、個人賠償責任保険は脚光を浴びるようになった。

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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