雇用保険、給付金を大幅削減で積立金6兆円に膨張…失業者にカネを払わない日本の失業保険
総務省が12月1日に発表した「労働力調査」によると、今年10月の完全失業率は2.8%と、5カ月連続の低水準を記録した。2003年3~4月に記録した5.8%から3ポイント減、失業者数でも384万人から180万人へと半減以上した計算になる。
厚生労働省発表の有効求人倍率も、10月は1.55倍と、求職者1人につき1.5件を超える求人がハローワークに登録されていて、こちらも空前の人手不足時代を表している。
そうしたなか、多額のお金が余っているのが、雇用保険財政だ。失業者が減って失業給付の支出が激減したためで、財政状態が黒字であることは喜ばしいが、それがセーフティーネット機能を犠牲にした結果だとしたら、手放しで喜んではいられないだろう。
下の図は、雇用保険の積立金と受給者数の推移をグラフにしたものだ。平成8年頃までは、常時4兆円台を確保していた積立金は、平成9年から毎年1兆円ずつ減少。まるでジェットコースターのように急降下していき、平成13年には、ついに5000億円を切ってしまい、財政破綻の足音がヒタヒタと迫っていた。
そこで国がとった政策は、雇用保険法の大改正だった。平成13年からは、退職理由別に所定給付日数(もらえる失業手当の日数)を改定し、自己都合で辞めると給付日数が最大180日分カットされた。平成15年からは、給付率(失業手当の在職中賃金に占める割合)を一律10%カットしたうえに、年齢別上限額も最大24%カットの大ナタを振るった。
危機一髪のところで破綻を免れた雇用保険財政は、以後順調に積立金残高を増やしていき、平成20年には5兆円の大台に乗せるところまで回復。これにより、勤労者がもしものときに頼るセーフティーネットはより強固なものになったように見えた。
空前の財政黒字を記録する雇用保険
グラフを見ると、平成20年までは積立金残高のカーブが急上昇し、平成21年に3.5%ほど減った後は、またなだらかに右肩上がりとなっている。
まるで、あのリーマンショックの影響がなかったかのようだ。
2008年秋に米国で起きたサブプライムローンに端を発した金融危機は、またたくまに世界中に波及。日本国内でも、株価が急落しただけでなく実体経済も短期間で急速に悪化、4%前後だった失業率はみるみるうちに5%台に乗り、平成21年9月には5.5%(失業者数363万人)を記録した。バブル崩壊後のピークだった平成15年の5.8%(失業者数384万人)が目前に迫っていた。