厚生労働省は12月22日、企業が精神障害者を雇用しやすくする特例措置を来年4月から設けることを決めました。
障害者雇用促進法によると、従業員のうち一定割合以上の身体障がい者や知的障害者の雇用を事業主に義務づける法定雇用率は現在2.0%です。2018年4月からは改正障害者雇用促進法が施行され2.2%に引き上げられます。そして、身体障害者と知的障害者に加え精神障害者の雇用も義務化されます。
現行は、週30時間以上働く障がい者は1人、週20時間以上30時間未満働く障害者は0.5人に換算して算出します。今回の特例処置の内容は5年間の時限措置ですが、精神障害者に限り、週20時間以上30時間未満の労働でも雇用開始から3年以内か精神障害者保健福祉手帳を取得して3年以内の人は1人と数えることが可能になります。
その背景にあるのは、身体障害者や知的障害者に比べ、精神障がい者は短時間労働でないと仕事が長続きしない人が少なくない、職場に定着しにくいという認識(厚生省幹部談)かと思われます。
私は、年間1000人の働く人たちと産業医面談を行っており、そのなかで障害者雇用された従業員との面談も年間50件ほどしています。その経験から、今回の決定に反対はしないものの、なんとも言えないもの(疑問?)を感じざるをえません。その理由を3つお話しさせていただきます。
特例は全障害者雇用に適応すべき
まず1つめとして、今回の精神障害者への特例は、身体障害者や知的障害者への差別でもあり、全障害者雇用に適応すべきだと思うからです。
労働契約法第5条には、「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」として明記されています。これは安全配慮義務として、従業員の持つ病気に関係なく、従業員が安全安心に働くことができる職場環境をつくることを意味します。
障害と病気の定義や違いについて言及することは(本稿では)避けますが、安全配慮義務は少なくとも、精神障害者と身体障害者や知的障害者を分けるものではないと思います。どうして、精神障害者だけが、短時間の労働でも1人分としてカウントされ企業が雇用しやすくされるべきなのでしょうか。