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スーパーで「まずい鶏肉」を買ってしまわない方法…一番美味い鶏肉を選ぶ方法

文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表
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スーパーで「まずい鶏肉」を買ってしまわない方法…一番美味い鶏肉を選ぶ方法の画像1「Thinkstock」より

「このお店の鶏肉はおいしいね」
「あそこの焼き鳥はおいしいね」
「鶏肉を買うなら、あの店だよ」

 食にこだわる人は、色々な話をします。豚肉や牛肉も、店によってだいぶ味が違いますが、鶏肉も店によって「あれ?」と口に出してしまうくらい味が違います。

 寒い時季に、おいしい鶏肉の入った鍋は格別です。鶏肉は、ほかの肉に比べて値段も安いので、質の良い肉にこだわっても、たくさん食べることができます。ぜひ、おいしい鶏肉の選び方を理解して、良い肉を堪能してください。

 食べ物のおいしさは、何が要因となっているかは物によって違います。鶏肉についても、下に掲げるような多くの要因が複雑に混じり合っているため、「これが効いているからおいしい」と一概に言うことはできません。

(1)食肉用の鶏には多くの種類がある

 もともと日本にいた鶏、南米の鶏、アジアの鶏、羽の赤い鶏、羽の白い鶏など、実にいろいろな鶏がいます。その鶏をどのように育てるかで、決定的に鶏肉の味は決まります。

(2)鶏が何を食べているか

 動物系の餌を食べているか、植物系の餌を食べているか、蛋白の含有率はどうかといった餌によって肉の味は変わります。たとえば、クセのある餌を食べていると、クセのある味になります。「ハーブを食べている」ということを売り文句にしている鶏もあります。

(3)鶏の育った期間

 鶏肉のうまみは、イノシン酸で比較することができます。イノシン酸は飼養期間で大きく変化します。一般的なブロイラーは飼養期間50~60日ですが、80日以上飼養する地鶏のほうがイノシン酸値は高く、120日以上飼育した鶏はさらにおいしくなります。飼養期間が長いほど、コクが出て肉質が締まってきます。ただし、採卵系の鶏のように2年間くらい飼養した鶏の肉は、ちょっと固いかもしれません。しかし、鍋に使用する場合は、親鳥のほうがおいしい出汁がとれるでしょう。

(4)鶏の育っていた環境

 ブロイラーの飼育環境は、なるべく鶏が動かないように、薄暗い環境で飼育します。ヒヨコを体育館のような所に入れて飼育し、初めて太陽を見る時は処理場ということになります。飼育効率を上げるために、薄暗く満員電車の中のような状況で育てるのが一般的な飼育環境なのです。

 一方で、農家の庭先を自由に飛び回っている鶏がいます。「平飼い」と呼ばれる飼育方法で、一般的には少し肉が固くなります。

(5)鶏を処理してからの期間

「朝締め鶏」などといわれる肉がありますが、鶏肉は絞めてからの時間がおいしさを分けます。肉は絞めた後にアデノシン三リン酸(ATP)が分解されて、おいしさの元であるアミノ酸に変化していきます。そのおいしさも、時間がたちすぎると、さらに変化して味が落ちてしまいます。ATPがアミノ酸に変化して、なおかつ死後硬直がなくなってきたときが、肉は柔らかくておいしいのです。一般的に、鶏肉は絞めてから12時間後くらいが一番おいしいときです。

 たとえば、活魚を絞めてすぐに刺身で食べると、コリコリしていて、あまりおいしくないときがあります。これは、死後硬直が始まって、まだATPがアミノ酸に変化していない例です。

(6)鶏肉の保管方法

 鶏肉をどのようにお店まで運んでいるかも重要です。死後硬直の変化は、温度によって変わります。また、細菌も温度によって増殖の状態が変わります。肉の状態は、凍結すると筋繊維の中に氷の結晶ができてしまい、筋繊維が切れてモソモソした食感になります。

 理想的には、絞めてからチルドで運ばれてきた肉を12時間以内に食べることです。そうすれば、びっくりするほどおいしい肉を堪能できます。

 凍結する場合は、1回だけにしたほうがいいでしょう。2回、3回と繰り返すと味が落ちていきます。何回も凍結しなければならない場合は、凍結肉を解凍した後、味を付けて再凍結するといいでしょう。工場ではよくあることです。たとえば、タイの加工工場で味を付けた後、凍らせて日本に運んでくるようなケースです。

 日本で販売されている凍結鶏肉は、チルド販売用の鶏肉が売れ残った際に凍結させているケースが多く、肉のおいしさが含まれている“ドリップ”が出てしまった後での凍結となり、味が劣化している可能性があります。実際に、チルドの売れ残りを凍結した鶏肉は、ブラジルで処理後すぐに凍結した鶏肉よりもパサパサしておいしくありません。

 鶏肉の入った段ボール箱には、チルドで保管した場合の賞味期限と、凍結した場合の賞味期限の両方が印字されている場合もあります。購入する際に、確認してみてください。

(7)肉の部位

 日本で鶏肉は、もも肉、胸肉、ささみなどが売られています。フライドチキンチェーン店のケンタッキーフライドチキンでは、ドラム(脚)、ウイング(手羽)、キール(胸)、サイ(腰)、リブ(あばら)と呼び分けています。

 日本人はもも肉が好きな傾向がありますが、アメリカでは胸肉が好まれます。一度、鶏肉を一羽分購入して、それぞれの部位を焼いて食べてみると、思わぬ発見があるかもしれません。また、もも肉でも骨付き肉を一枚丸ごと食べてみるなど、今までと違った食べ方に挑戦してみてください。

 早速、スーパーの肉売り場で、上記の項目を質問してみてください。店員の方は、どのくらい説明できるでしょうか。あなたは何を重視して肉を購入しますか。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)

河岸宏和/食品安全教育研究所代表

河岸宏和/食品安全教育研究所代表

1958年、北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、「農場から食卓まで」の品質管理を実践中。「食品安全教育研究所」代表。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハム・ソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け惣菜工場、卵加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。

「食品工場の工場長の仕事とは」

Twitter:@ja8mrx

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