入力業務が始まった10月、年金機構に関係者から「作業が契約どおりに行われていない」という情報提供(告発)があったので、年金機構の職員が改善を指導した。しかし作業の改善が行われないまま大幅な納期遅れが予測されたため、今年1月6日に特別監査を実施したところ、中国・大連の業者に無断で再委託していたことが判明した。
その後、年金機構が第三者の大手IT企業に依頼した追跡調査によると、中国の業者に再委託されていたのは、年金受給者501万人分の年金受給者当人と扶養親族の氏名とヨミのみで、再委託先業者のデータ管理(外部への再々委託、納品後のデータ消去など)に問題はなかった、という。それが事実であれば、障害の有無やマイナンバー、年間所得など、機微に及ぶ個人情報は流出していなかったことになる。
年金機構がSAY企画の違約状態を把握したのは昨年10月。改善指導がどのような内容だったか不明だが、落札した業者に最後まで責任を取らせるのは、入札実施者の認識として間違いではない。しかし無断再委託が判明した1月6日に作業をストップせず、2月13日まで作業を続けさせたこと、さらにそれから1カ月以上経って謝罪会見というのは、「繁忙期で他に肩代わりできる業者が見つからなかった」(水島理事長)で済む話ではない。
とてもプロの仕事とは思えない
公共調達では、落札者が無断で第三者に再委託することが禁じられている。まして再委託先が海外の業者というのでは、SAY企画が3年間の応札資格停止の処分を受けたのはやむを得ない。また、結果論ではあるけれど、昨年10月の時点で年金機構が公共調達応札資格を所管する財務省に「問題あり」と報告していれば、その後、国交省や厚労省などの案件をSAY企画が落札することもなかっただろう。
SAY企画を弁護するつもりは毛頭ないのだが、年金機構の謝罪会見の続報には重大な勘違いがある。一つは「SAY企画は原票(扶養親族等申告書)をスキャナーで読み取って入力していたことがミスの原因」であるかのように報じられたこと。スキャナーで文書や書類をイメージ(画像)化し、OCR(光学式文字読み取り)ソフトでコードに変換するのは、ANK(アルファベット、数字、カナ)もしくは活字に限られる。手書きの場合は、AI(人工知能)に近い高度なパターン認識技術が必要になる。