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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

フェイクニュース規制は、フェイクニュース以上に危険だ…政府は国民の言論統制に利用

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「Gettyimages」より

 米フェイスブックにフェイク(偽)ニュースが蔓延したとされる問題をきっかけに、SNS(交流サイト)上の偽ニュースに対する規制論が強まっている。

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は4月10~11日に開かれた米議会公聴会で、個人情報流出に加え、偽ニュースの蔓延について謝罪。人工知能(AI)などを使った対策の強化を説明した。政治的広告に対する規制強化の動きには「なんらかの規制は避けられない」と受け入れる姿勢を示した。

 しかし、もし規制強化が実現したら、一番痛手を被るのはフェイスブックではなく、そのシェアを奪おうとする新興SNSや独立系ニュースサイトだろう。ザッカーバーグ氏自身が指摘したとおり、小規模な会社は資本力が弱く、規制の負担に耐えきれないからだ。規制強化はフェイスブックなどSNS大手の市場支配をむしろ強めることになる。

 それ以上に気がかりなのは、偽ニュースの規制が言論・報道の自由の抑圧につながる恐れだ。

 ザッカーバーグ氏はAIで偽ニュースを見分けるというが、実際にはそう簡単ではない。日本経済新聞によれば、同社のAI開発責任者、アレクサンドル・ルブリュン氏は「AIは学習して不適切かどうかを判断するため、新手の投稿には対処できない」と述べる。

 そのうえ、AIによる判断にはある種の危うさがつきまとう。2016年の米大統領選後、米カーネギーメロン大学のコンピューター科学者、ディーン・ポマロー氏は「フェイクニュース・チャレンジ」というプロジェクトを立ち上げ、ニュースの真偽を見分ける手法を公募。17年6月までに世界各地の80チームが参加し、優秀だった上位3チームには合計2000ドル(約21万円)の賞金が与えられた。

 問題はニュースの真偽を見分ける方法だ。ニューヨーク・タイムズの記事によれば、各チームは「検証された記事のデータベース」を基にAIで判定するという。「検証された記事」とは常識で考えれば、大手新聞、雑誌、テレビなど主流メディアの報道だろう。

 もしそうだとすれば、真偽の判定は不安が残るといわざるをえない。主流メディアの報道はいつも正しいどころか、大きな誤りを犯す場合が少なくないからだ。

 米政府は2003年のイラク戦争で、イラクが大量破壊兵器を保有していると主張し、安保理決議のないまま、攻撃を開始。だが、開戦の理由とした大量破壊兵器は最終的に見つからなかった。当時、米欧の主流メディアは政府の言い分を無批判に垂れ流し、不正な戦争に加担した。

「報道価値のある個人」とは何か?


 ところでイラク戦争のように、政府が偽りの情報を流した場合、AIはどう判断するのだろうか。もし政府の嘘に警鐘を鳴らしてくれるならありがたいことだが、そうではなさそうだ。

 前述のフェイクニュース・チャレンジは、偽ニュースを「人を欺くために完全にでっち上げた主張や報道。しばしば(金銭など)2次的利益を目的とする」と定義したうえで、こんな但し書きを付ける。

「報道価値のある個人によってなされた主張は、たとえ明らかに誤ったものでも、定義上、報道に値するので、偽ニュースとみなさない」

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