スルガ銀行への批判が止まらない。女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」への投資をめぐり、スルガ銀行の不正融資が発覚して数カ月が経過した。外部の第三者委員会が8月末に報告書をまとめる予定とのことだが、すでに弁護団に委任したかぼちゃの馬車オーナーは250人にまで拡大し、最大時で787人いたオーナーの実に3割に及んでいる。
スルガ銀行については、かぼちゃの馬車に関する騒動がクローズアップされがちだが、実際に同行の融資に関する“キナ臭い”話は2010年頃から続出していた。特に地方のRCマンションの購入に関する提携不動産会社のレントロール(不動産の賃貸借条件の一覧表)が偽装であるとして、実際に裁判に至った事例も複数存在する。だが、あくまでスルガ銀行は「直接的には関与していない」と主張し、謝罪や補償に発展することはなかった。だが、スルガ銀行のずさんな融資は、業界内ではよく知られた話でもあった。
ここでポイントとなるのが、かぼちゃの馬車しかり、中古RCマンションの購入にしても実質的に被害を受けているオーナーたちは、極めて個人属性が高く、投資知識があった人物が多いということだ。企業社長、開業医、大手メーカー、大手商社から外資系企業への勤務者に加え、メガバンクの融資担当者までが実害を受けている。金融や融資関係者の購入者も多く、いわばその道のプロでも信じてしまう巧妙さがあった。通称“スルガスキーム”にハマり融資を受けた人たちは、どのような過程を経て購入に至ったのか。以下、スルガ銀行の融資を受けた出資者の声を紹介する。
【中田さん(仮名/開業医・40代) かぼちゃの馬車オーナー】
1年前に知人の医師がスマートデイズを利用していたこともあり、紹介されました。触れ込みは、「自己資金があまりなくても始められる」でした。まずは担当者とメールでやり取りし、すぐに面談の運びとなった。正直、最初は購入を戸惑いました。というのも、女性向けのシェアハウスというニッチな産業で投資分を回収できるのか、疑問だったんです。ただ、スマートデイズの担当者がかなり細かいデータと裏付けを示してきて、「これならなんとかなるかも」と、安易に考えてしまいました。
踏み切った理由は2つあります。ひとつは担当者がしつこく繰り返したスルガ銀行の名前です。「地銀の雄」ともいわれるスルガ銀行が後押ししているならと信頼し、購入の際に判断材料となりました。もうひとつは、契約時に確約されていた家賃保証です。シェアハウスの性質上、どうしても入退去はつきもので、安定した家賃収入を得られるのかという不安もありました。実際に現場を見ても、決して衛生面や建築面で満足したわけではなかったからです。ただ、担当者のトークがうまく、私が投資の素人ということも見破られていたんでしょう。データを見せられながら、「30年間保証、頭金なし」という謳い文句に心が動いてしまいました。
ところが、やはり入退去者が多くて、実際に聞いていたよりも入居率が低いという事実が次第に明らかになっていきました。それで問い合わせると、購入段階では一定の家賃を確約しておきながら、しばらくすると取り決めの支払い金額を下げると担当者が主張してきました。それで、知人の医師やほかのオーナーとの集まりにも顔を出したのですが、皆同じようなトラブルに巻き込まれていることがわかりました。
その後、何度も担当者に詰め寄りましたが、「対応中です。しばらくお待ちください」の一点張りでした。埒が明かないので法的処置を考えていた際に、報道で民事再生手続きを行っているとことを知りました。投資の世界は自己責任といいますが、それでも明らかに今回のケースは度が過ぎます。今は弁護士に委任していますが、正直、金銭的な面で返りがあるとは期待していません。スマートデイズもそうですが、自分たちの成績のために不正融資と知りながら、契約を重ねていったスルガ銀行にも強い憤りを感じています。