日本の家は、築20年を超えるとほぼ資産価値0円になる。そんなフレーズを一度は耳にしたことがあるだろう。ほぼ0円の家は23区内をはじめ、日本各地にあふれている。日本はいま、「0円住宅」時代なのだ。ちなみに0円というのは建物価値のことで、土地代はもちろん別途かかる。
メンテナンスの状況によっては0円どころか、マイナス査定になる可能性さえある。5年ごとに行われる総務省の調査によると、2008年10月の時点で総住宅数5759万戸に対して、総世帯数は4999万世帯。つまり、約760万戸が誰も住んでいない空き家なのだ。そのなかには、築20年以上のほぼ0円の家も多く含まれている。マイホームがほしい人にとっては、この0円の家を選びたい放題だ。そう、日本はいま家余り大国なのだ。
私は23区内で、ほぼ0円の家を購入した。築37年の中古一戸建て。建物価値はほぼ0円だと不動産屋に言われた。場所は中野区。駅から徒歩5分。閑静な住宅街で、生活環境は抜群だ。もちろん、土地代はそれなりにするが、相場同等だ。
ほぼ0円の家を買い、まだ使える基礎や骨格だけをいかして、新築同然にリノベーションした。リノベーションとリフォームの違いをご存じだろうか? リフォームとは、壊れたものを元通りに直す改修工事のこと。リノベーションとは、いまのモノの状態から、よりよい形に変える大規模改修工事を指す。私が買った家は屋根が腐敗し、天井が崩落、床は水浸し。カビだらけでひどいニオイがしていた。そんな状況から、間取りも仕様も大幅に変え、自分が住みやすい環境に大改装した。キッチンや浴室、トイレから壁紙、外壁など、細かい仕様まですべて夫と2人で好きに選んだ。まるで、注文住宅を建てるかのような感覚で、ひとつひとつ吟味しながら、私たちの理想に合った新築そっくりの家を手に入れた。
このマイホーム購入術には、大きく2つのメリットがある。まずひとつめは、従来の約半額で夢のマイホームが手に入ること。建物ほぼ0円、土地代2070万円。リノベーション費用1180万円。トータル3250万円。近くで売られている新築のほぼ同じ坪数の一戸建ては土地建物込みで5000~6000万円ほどする。随分と得をした気分だ。
空き家がなくなり、ご近所さんも大喜び
もうひとつのメリットは、社会問題になっている「空き家問題」が軽減されることだ。現在のペースで新築の家をつくり続けた場合、30年後の2040年には空き家率が43%に達する(参考資料「人口減少時代の住宅・土地利用・社会資本管理の問題とその解決に向けて(下)」<野村総合研究所>)。言いかえれば、このままいくと2軒に1軒は空き家となる。だからこそ、これからの社会を担う若いファミリー層に、ほぼ0円の中古住宅を買い、リノベーションすることをおすすめしたい。