こんにちは。江端智一です。
今回は、3.11の大震災から始まった、福島原子力発電所(以下、福島原発という)の事故について、津波の到来から原子炉建屋の爆発に至る経緯を、「一体、何が起こっていたのか?」という観点からレビューしてみたいと思います。
きっかけは、私の嫁さんの「今回の事故が、まったく理解できない」という一言でした。
この事故に関しては、原発事故調査委員会の調査報告書や、その他のメディア、書籍で多くの情報が開示されています。多すぎるくらいです。
これらの内容は難しく、エンジニアである私でも理解するのは大変でした。また、この事故の内容を他人に語ることは、さらに難しかったです。
しかし、この事故を、
「なんだか知らんが、すごい事故があった」
「誰々が悪かった」
「何が足りなかった」
で片づけて、「はい、おしまい」とすることは、日本中を放射能で汚しまくったことを帳消しにしてしまうくらい「無責任」であると思うのです。
電力会社や政府が国民に対して事故の説明責任があるのと同様に、私たち大人は、どんなにしんどくても面倒でも、この事故を自分の頭で理解して、子供に語り継ぐ責任があると思うのです。
今回のコラムでは、前述した通り、「誰々の何が悪い?」という責任論については触れることはしませんし、また、原発存続の要否や、今後の対応などもついても一切言及しません。また、ページの関係上、原子炉建屋の爆発による放射能汚染の被害については割愛します(ご要望があれば、お知らせください)。
1.そもそも原子力とは何か?
原子力とはエネルギーの一種です。ここでは「核分裂反応」によるエネルギーのみに言及します。そのエネルギーはどうやってつくり出されているかというと、「怒り狂った兵士による銃撃戦」とイメージすればわかりやすいかと思います。
ここでの「兵士」とは、ウランなどの原子力エネルギーの燃料(下記図1のペレット、後述する燃料被覆管)のことであり、「銃撃戦」とは、その燃料が中性子を放出している状態を指すこととします。また、この中性子を「弾丸」と表現するものとして、以下「核分裂反応によるエネルギーの作り方」の説明を試みてみます。
核分裂反応の仕組みは、ざっくりと、以下の通りです。
【Step.1】兵士が、最初の1発の弾を別の兵士に当てる
↓
【Step.2】その弾に当たった兵士が怒る(この怒りがエネルギーとなる)
↓
【Step.3】怒った兵士は、2発以上の弾丸を無差別に撃つ
↓
【Step.4】その弾に当たった兵士も怒り、同じように2発以上の弾丸を無差別に撃つ