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大塚将司「反メディア的!その記事、ダマされていませんか?」第3回

緊急出版でもボロ儲け目論んだ朝日、なぜ橋下徹からフルボッコに?

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緊急出版でもボロ儲け目論んだ朝日、なぜ橋下徹からフルボッコに?の画像1「週刊朝日」(朝日新聞出版社
/10月26日号)
 大手新聞社の人材の劣化は想像以上に深刻だ。

 大誤報といえば、最も劣化の進んでいる日本経済新聞の“専売特許”か、と思っていたら、部数トップの読売新聞も10月11日付朝刊で大誤報をやらかした。そして、今回の「週刊朝日」(朝日新聞出版)の緊急連載中止事件である。

 週刊朝日(10月26日号)が発売になったのは10月16日、火曜日である。朝刊の広告を見て「おい、おい、これはなんじゃ?」と思った。

 右トップの大見出しに「<緊急連載スタート>ハシシタ/佐野眞一」とあり、袖見出しで「救世主か衆愚の王か/渾身の同時進行ノンフィクション/橋下徹本人も知らない本性をあぶり出すため、血脈をたどった!」とまで宣言していたからだ。

「はしもと」と読む名字は、「橋本」か「橋元」が普通である。現大阪市長の橋下徹氏がテレビ番組で活躍するまでは、世間で「橋下」を「はしもと」と読むと知っていた人は少なかったのではないだろうか。「橋下」は特殊な名字で、文字通り「はしした」とも読むのだ。このことはマスコミの世界の周辺に身を置く者ならたいてい知っているが、大っぴらに「ハシシタ」と白日の下に晒すことはしない。

 案の定、橋下大阪市長はこの緊急連載に猛反発、翌17日に報道陣に対し、朝日新聞社や朝日放送など関連メディアから記者会見などで質問されても、グループとしての見解が示されない限り、回答を拒否する意向を表明したのだ。

●連載の目的は、ルーツを暴き出すこと

 その理由として、橋下氏は「(同連載が)政策論争はせずに、僕のルーツを暴き出すことが目的とはっきり言明している」点を挙げ、「血脈主義ないしは身分制に通じる、本当に極めて恐ろしい考え方だ」と非難した。発売になった週刊朝日を読んでみると、タイトルは『ハシシタ 奴の本性』で、ノンフィクション作家の佐野眞一氏と同誌取材班が執筆した記事は、橋下氏の主張通り、橋下氏のルーツが中心テーマになっているのは自明だった。

 他人の前歴はもちろん、出自やルーツを知りたいという「劣情」を抱くのは人間の本性である。そして、知り得た「DNA」を元にその人物を推し量りがちになる。週刊誌はこうした人間の「劣情」を満足させるための媒体という側面がある。それは否定できない。しかし、それには節度というものがある。媒体ごとにその度合いに濃淡はあるが、その節度はジャーナリズムを標榜する以上、踏み外してはならない一線である。人間の理性は原則として「劣情」を容認しないからだ。

●ある最高裁の判例

 9月7日のことだ。最高裁が注目すべき初判断を示した。被告が犯人であることを立証するために、同種の前科を証拠にすることは原則として許されないと判示した。「不当な偏見をもたらし、事実誤認を招く恐れがある」からだ。ジャーナリズムの世界に身を置く者なら、「何を今さら。当たり前じゃないか」と思うが、新聞各紙はこの最高裁の初判断を大きく報じている。「不当な偏見や差別は許さない」というのが、ジャーナリズムの重要な理念の一つだからだ。

 この視点で、今回の週刊朝日の緊急連載を評価すれば、0点というほかない。橋下氏の政治手法や政治的主張などをメインテーマにして、その流れの中で、出自やルーツを紹介しているならまだしも、緊急連載は真正面から「DNA」を元に人物像を描こうとしており、橋下氏の主張に反論などできようもない。当然のことながら、発行元の朝日新聞出版は19日、連載記事について、同和地区などに関する不適切な記述が複数あったことを理由に、河畠大四・編集長が謝罪コメントを出し、第2回以降の掲載中止を決めるところに追い込まれた。ちなみに、週刊朝日のサイトをみると、表紙の画像も削除されていた。

 一体、なぜ、こんなみっともない結末になってしまったのか?

BusinessJournal編集部

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