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たかのビューティ事件、不祥事の“告げ口”はイケナイ行為なのか?法的に正しい通報とは

文=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員・弁護士

 要するに、「仕事を教えてやり、給料も払っているのに内部告発は許せない」というものですが、あえて私見を言うならば、日本特有の「家父長的な発想」の顕れなのかもしれません。

公益通報制度

 しかし、法律違反はあくまで法律違反です。特に、残業代を含めた給料の不払いに対しては刑罰(30万円以下の罰金)が科せられるほど重大な問題ですし、そもそも「生活の糧」である給料を、「新人の頃から世話してやっているんだから少しは目をつぶれ」という理不尽な“論理”で泣き寝入りさせるのは許されることではありません。

 もちろん、「通報がバレたら会社から仕返しされるから」「同僚や先輩にも迷惑がかかるから」といった理由で躊躇したり、といったこともあるかもしれません。このようなことを避けるために今一度、公益通報制度を思い起こす必要があるでしょう。

 公益通報制度は、公益通報保護法の施行から8年が経ち、だいぶ知名度が上がってきたように思われますが、まだまだいろいろと誤解があるようですので、あらためて解説したいと思います。

 公益通報者保護法とは、公益目的で会社内部の不祥事などを外部に公表した従業員(公益通報者)を、会社が不当に解雇したり、降格や減給といった不利益な扱いすることを禁じた法律です。そしてこの法律は、会社の内外に通報窓口を設置することを勧めてもいます。

 この法律の最大の目的はもちろん、一定の場合にマスコミなどへの通報(リーク)を行った従業員の解雇などを禁止(無効)とすることにありますが、他方で、従業員が解雇などの不利益を恐れずに不祥事などを通報できる制度を設けることで、会社内部で発生する問題を重篤化する前に早期に是正するきっかけを与えるところにもあります。

 例えば、「基準値以上の消毒液を使用している食品工場がある場合、重篤な健康被害が発生する前の段階で通報を行う機会が保護されていれば、初期の段階で被害発生の“芽”を摘むことが可能となる」わけです。

 要するに、通報窓口を設置することで、事実上、突発的なマスコミなどへの通報(リーク)を思いとどまらせることもできますし、さらには、通報窓口の存在が不正や法律違反をはたらくという動機を削ぎ、または被害を最小限に抑える効果を期待できるわけです。

 なお、せっかく従業員が通報窓口に通報したにもかかわらず、一定の期間が経過しても会社が何もしてくれない場合もあります。このような場合、同法は当該通報者が「通報対象事実を通報することがその発生、またはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者」に通報することを認めています。つまり、会社内の通報窓口に通報しても放置されたり、もみ消そうとされた場合、「企業の不正等により発生する被害やその拡大を防止するための一定の影響力を有する者」、すなわちマスコミや政治家や監督官庁などに駆け込んで、会社の不祥事や法律違反をベラベラしゃべっても問題ない、と法が積極的に認めているのです。これを「外部通報」と呼んでいます(法3条3号等)。

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