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たかのビューティ事件、不祥事の“告げ口”はイケナイ行為なのか?法的に正しい通報とは

文=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員・弁護士

公益通報制度の実態

 このような公益通報制度ですが、正直なところ、うまく運用されているとはいえません。当職が所属する東京弁護士会公益通報特別委員会をはじめ多くの機関が公益通報制度の普及活動などに努めていますが、通報窓口を設置する会社は増えているものの、前述のような日本特有の企業風土もあり、従業員側も会社側も、なかなか理想通りには運用できていないのが現実です。

 実際、高野社長も「通報は悪」であるかのような言動を示しているようですし、通報を行ったことを理由とする不利益処分について裁判で争われるケースが後を絶ちません。また、マスコミも含め、一般的に公益通報制度の正しい理解がまだまだである点も言及せざるを得ません。

 例えば、前述の事件では「公益通報保護法に違反するとして厚生労働省に申立てをした」旨の報道が多くなされています。しかしながら、厚生労働省は不祥事などの通報窓口にはなり得ても、同省には従業員の解雇が無効かどうかを判断する権限はありませんし、従業員に対する不利益処分を是正するための申立手続などはありません。DV(家庭内暴力)保護法のように、「通報したことにより、今まさに不利益を受けている者を保護する」制度と勘違いされているのかもしれませんが、決してそのような制度ではないのです。裁判所が、事後的に「解雇は無効」という判断を行うための基準を提示しているにすぎません。

 つまり、使い勝手が悪いし、肝心の正しい理解の普及もまだまだというのが現状といわざるを得ません。これまで、弁護士会などが政府に対し意見書を提出するなどして、法改正を促していますが、なかなか前に進んでいないようです。韓国では、通報内容が社会の利益になるものであった場合、報奨金が支払われる制度があるようですし、法の趣旨の実現のためには、思い切った法改正も必要ではないでしょうか。
(文=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員・弁護士)

●弁護士法人アヴァンセリーガルグループ
東京、宇都宮、大宮、横浜、名古屋、大阪に拠点を持つ、法律のスペシャリスト弁護士法人。特に企業法務全般、交通事故・医療過誤等の一般民事事件、および離婚問題・相続問題等の家事事件に強みを持つ。また、無料法律相談、電話相談も常時受け付けている。

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