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JMR生活総合研究所「消費と会社の戦略を読む」(12 月13日)

消費再増税延期、持続的消費回復につなげる条件とは 消費意欲底堅く、低価格離れ進む

文=松田久一/JMR生活総合研究所代表

 これら諸要因の力の均衡によって、消費は時折揺らぎを伴いつつも、バランスを維持している。人口数では低所得層が優勢であるが、市場規模の大きさでみると消費額の大きい富裕層と富裕層に追随する中流層の影響力が低所得層をしのぐ。

 今回の消費再増税延期は、それまでは消費の下振れ要因となっていたものが天秤の片方の皿から外されることで、短期的には消費を上振れさせる効果をもたらす(「図表2 消費をめぐる力の均衡」より)。しかし、住宅、自動車や家電などの選択的耐久財の回復は容易ではなく、消費財企業は消費者の品質志向をどう取り込むかが課題となりそうである。

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●持続的な消費回復の条件

 再増税延期により消費回復を持続させるための条件は2つある。第1は、再増税延期により、財政不安や年金不安が高まり、将来における税や年金の負担増加予想が強まるのを防ぐことである。再び、将来不安が高まれば、消費マインドを冷やし貯蓄意欲を高め、消費の腰折れと低迷に陥る可能性もある。

 第2は、所得の再配分政策を適切に行うことである。異次元金融緩和による資産バブルは、富裕層への富の集中と偏在をさらに進める効果がある。先進諸国でみられるように、1%の富裕層が全国民総収入の20%以上を占める階層社会化が進む可能性がある。具体的には、100万人が3億円以上の年収を得て、残りの99%が年収300万円以下の社会である。アメリカ社会はこれに近い。ちなみに、現在の日本では年収が3億円を超える人はおよそ3000人と推定され、総人口の0.003%以下である。しかし、今後過度の不平等が進めば社会不安を招き、消費回復の長期持続には結びつかない。

 政府には、再増税延期を持続的な消費回復へつなげるための政策実行が求められている。
(文=松田久一/JMR生活総合研究所代表

松田久一

松田久一

JMR生活総合研究所代表

JMR生活総合研究所

 生活者の総合研究に基づいて、新しい事実を発見し、その事実から戦略を組み立て、経験を生かしたコンサルティングを通じて、クライアントの問題解決を行う。1991年に設立してから今日までの約20年の間に、年間平均250、延べ5000のテーマに取り組んできた実績を持つ。主たる領域は、食品、飲料・酒、化粧品・日用雑貨、輸送機器、家電・情報通信、流通など生活者と接点を持つ業界。日本を代表する企業のマーケティング課題のソリューション(解決)に取り組んでいる。

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