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小林敬幸「ビジネスのホント」

何が公共事業を破壊するのか?政治による予算増減が、深刻な非効率性と職能労働者不足を招く

文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者
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 どの程度その政策の決定に力を行使したかという証明が難しいとの指摘もあるかもしれないが、選挙活動中に「あの橋の建設に尽力しました」と威張ったりすれば、それを証拠にすればよい。そういう政治家は、建設した橋の利用量が計画以下であった場合、損害賠償の可能性もある。実際に裁判で賠償責任が出ることはまれであっても、そういう仕組みがあるだけで、ずいぶん納税者の納得感も高まるのではないだろうか。

(5)ストックとして供給力を向上するという、本来の公共事業としての機能に重点を戻すべき

 以上のようにさまざまな誤解に満ちた議論をみていると、公共事業についてフローとしての需要喚起の機能ばかりをみているから、政策の揺れが大きくなることがわかってくる。需要を創出し景気を回復させるためだとして予算を急増させたかと思えば、その結果として需要の累乗効果がそれほどではなかったとして予算を急減させる。

 急増と急減がなされるから、政治家が活動の場を見いだす。需要の効果を信じるから、工事会社は利益を誘導してくれる政治家を支援する。一方で、人材育成やメンテナンスは、需要の急増に結びつかないので目が行き届かない。

 本来の公共事業の意味は、ストックとして社会全体の供給側の生産効率(全要素生産性)を着実に上げていくことのはずである。そしてストックとして機能を最も効率良く発揮するには、予算の激しい増減を行わず、安定的にメンテナンスと人材育成を行っていかなければならない。

 今こそ、公共事業はホームランか三振かという4番バッターではなく、出塁率を高め、打線をつなげてチームの着実な得点を目指す貴重な2番バッターに意味づけを変えるべきなのである。
(文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者)

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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