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片山修「ずたぶくろ経営論」

ソニーに「夢」「感動」を期待するのは、もうやめにしよう 10年超も構造改革の異常さ

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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 問題は、改革の方向性を間違えず、計画を確実に実行することである。私は、ソニーにはまだ技術を軸にした底力が残っていると思う。ブランド力もある。その意味で、「第二次中期計画」の示した方向性は正しいというか、「稼ぐ力」を身につけるしか、再建の道はないだろうと思う。そもそも、株主から預かった資金を使って効率的に収益を上げることは、上場企業の責務であり、「普通の会社」の条件である。

●「普通の会社」になったパナソニック

「普通の会社」で思い出されるのが、パナソニック社長の津賀一宏氏が12年10月の第2四半期決算発表の席上で口にした「当社は今、普通の会社ではないと、我々はしっかり自覚するところからスタートしなければいけないと考えています」という言葉である。パナソニックは12年3月期連結決算で7720億円の純損失を計上した。13年3月期連結決算には、純損失は7540億円に上った。

 津賀氏は80以上あったビジネスユニットを約半分に見直し、すべてのビジネスユニットにBS(貸借対照表)やPL(損益計算書)を持たせて、自主責任経営の最小単位とした。そして、営業利益率5%以上の基準を満たせない場合は、最悪売却あるいは収束させるという厳しい手段をとった。
 
 その結果、パナソニックは14年3月期に3期ぶりに黒字転換し、14年度の通期業績見通しでは売上高は7兆7500億円と据え置いたものの、営業利益は3100億円から3500億円に、当期純利益は1400億円から1750億円と上方修正した。また、15年度の達成を目標にしていた中期経営計画を1年前倒しで達成できる見通しだ。パナソニックは、「普通の会社」になったといえるだろう。

●ソニーのジレンマ

 ソニーもまた、パナソニックと同様に、「普通の会社」でないことを自覚し、「普通の会社」を目指さなければならないのはいうまでもない。しかし、ソニーの場合、それは簡単ではない。「ユーザーに感動をもたらし、好奇心を刺激する会社であり続けます」と、平井氏は「経営方針説明会」の席上、語った。

「感動」「夢」「好奇心」は、ソニーの創業以来のDNAである。平井氏は、これからもソニーのDNAを継承していくことを約束した。ここに、実はソニーの悩ましさ、ジレンマがある。業績がここまで落ち込んでも、なお、ソニーに「夢」を求める声が内外にある。「夢」と「収益重視」は、極めて両立が難しい。いや、そこにこそビジネスチャンスがあるのだが、今のように巨大企業化して官僚化がはびこり、ベンチャースピリッツが消え失せたソニーにおいては、それを求めるのは酷だと思う。
 
 ソニーは、99年にエレクトロニクス事業を中心に1万7000人の人員削減を発表して以来、ほぼ3年ごとに1万人から2万人の人員削減を繰り返してきた。その過程で、優秀な技術者は社を去ったともいわれている。社員のモチベーションの低下が指摘される折から、果たして「夢」のある商品をつくることなどできるのだろうか。ソニーに「夢」や「感動」を託すのは、もういい加減に終わりにしてもいいのではないか。