会社側の敗北は、まるでオウンゴール?

 当日、この総会に出席していた闘う個人投資家・山口三尊氏によれば、議決権総数1万2293個に対し、行使議決権総数は1万425個(行使割合84.8%)、うち新東通信案への賛成が5988個で、行使議決権総数1万425個に対する割合は57.4%だ。新東通信の保有議決権は3776個(行使議決権総数に対する割合は36.2%)だったので、新東通信は21.2%の支持を獲得したことになる。

山口氏は、総会での質疑応答を自身のブログで公表している。その詳細を見てみると、会社側の敗北はまるで「オウンゴール」という印象だ。山口氏も「もともと、3割保有で取締役会の過半数を押さえるという点に納得がいかなかった。だから、会社側に投票しようと思って総会に出席したが、あまりにも会社側の応対が頼りないので、あきれて新東を支持してしまった」という。

 総会の経過を簡単にまとめると、以下の通りになる。まず、議長を務めていた共同ピーアールの上村巍社長が、ウェブ関連事業で5億7500万円の損失を出したいきさつについて、こう説明した。

・官公庁から受注したウェブサイトの構築と運営である
・11万ページと膨大で、高齢者や障害者が支障なくアクセスできるものを求められた
・13年5月にウェブ制作会社と共同で受注、その際に取締役会決議は経ていない
・担当者が病気になり、ウェブ制作会社も倒産した
・発注元の官公庁とも協議し、撤退も検討したが、それは望ましくないと判断した
・今後は保守業務なので、追加損失はない
・今後の再発防止策として、一定金額を超える場合は取締役会に報告することとし、外部者にプロジェクトマネージャーの補佐をしてもらうシステムにする
・この損失がなければ、8000万円の黒字になるはずだった

 この説明が終わった時点で、上村議長の議長解任動議を新東通信の谷鉄也社長が出し、それが通って議長は谷氏に交代した。この時点で、ほぼ勝負は決したと考えていいだろう。

 このあと、取締役が「ウェブ制作会社は共同受注ではなく、下請けだった」と訂正し、取締役会決議なしで契約に至ったことについて株主から責められると、「反省しています」と語った。

 また、創業社長の資金流用について、会社として刑事告訴していないことなどを責められると、「流用額はすでに全額回収しているので、刑事告訴はしない」と釈明。株主が上村社長を無能呼ばわりすると「あなたに無能呼ばわりされる覚えはない」とやり返すなど、不毛なやりとりが繰り返された。

 懸念事項の「他のクライアントが嫌がるのではないか」という質問に対して、谷議長は「新東自身が大手広告代理店とは恒常的な取引があり、新東が経営参加しても支障があるとは思えない」と回答した。

 そして、結果は会社側の負けである。山口氏は「純資産が6割近く減るような巨額の損失を出した取引なのに、社長でありながら内容が頭に入っていないのでは話にならない」と語る。確かに、ウェブ関連事業での失敗を指摘されるのは十分に予想できたことであり、総会までに単独で議決権の過半数をとれるだけの委任状を入手できていなかったならば、メモを用意し、リハーサルもやっておくのがセオリーではないか。そのような準備をせずに総会に臨んでいるのは、あまりにも楽観的すぎる対応といわざるを得ない。今回の共同ピーアールの敗北は、まさにオウンゴールだったということだろう。
(文=編集部)

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