9月30日からアメリカのアトランタで行われた、参加12カ国による閣僚会合は、当初2日間の予定を大幅に延長し、10月5日に交渉の大筋合意が発表された。
現地で交渉にあたった甘利明内閣府特命担当大臣からの報告を受けた安倍晋三首相は、「TPPは、価値観を共有する国々が自由で公正な経済圏をつくっていく国家100年の計である」「交渉の結果、農業分野において、米、牛肉、豚肉、乳製品といった主要品目を中心に、関税撤廃の例外をしっかりと確保することができた」と語った。
今回の合意では、医薬品のデータ保護期間が実質8年間となり、自動車ではアメリカで日本車にかかる関税が25年かけて段階的に撤廃されることなどが決定された。
農業分野を見ると、コメで日本はアメリカに対して従来の関税を維持する一方、新たな輸入枠として年間最大7万トンの枠を設け、オーストラリアとも同8400トンが設定される。また、牛肉の関税は段階的に引き下げられ、現在の38.5%が協定発効から16年目以降は9%になるほか、バターと脱脂粉乳については生乳換算で6万トン、6年目以降は年間最大7万トンの新たな輸入枠が設けられる。
いずれにせよ、海外からの食材の流通が拡大することは間違いなく、一部では「危険な食品が日本に入ってくるのではないか」という懸念もある。「TPPは、日本の食の安全に重大な脅威を与える」と指摘するのは、フリーライターの小倉正行氏だ。
「TPPにより、日本の関税撤廃率は95%にも及び、アメリカをはじめとする海外から低価格な食品の輸入が急増することになります。特に、ホルモン系のがんの原因ともいわれる成長ホルモン剤が大量に使用されたアメリカやオーストラリア産の牛肉は、関税が大幅に下げられたことによって、大量に流通することとなり、私たちの健康に大きな影響を与えるでしょう。
また、輸入食品の検疫を行っている食品衛生監視員は、全国に406人しかおらず、検査率はわずか1割です。つまり、9割の輸入食品が検疫なしで流通しているわけです。このような状況下で輸入食品が急増することは、まさに食の安全の脅威といえるでしょう」(小倉氏)
食品の安全基準、規制緩和の恐れも
さらに、小倉氏は税関の通関体制についても言及する。日本はTPPによって48時間通関が義務化されるが、それが輸入食品の安全性確保に大きな影響をもたらすというのだ。