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碓井広義「ひとことでは言えない」

隔離されたハンセン病患者が、故郷に戻れない実態 封殺された差別と偏見

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

テレビ新潟放送網『夢を追いかけた少女の26年間の記録「夢は牛のお医者さん」 テレビ番組と自主映画上映活動』

 新潟県の山あいにある小学校に、3頭の牛がやってきたのは1987年のことだ。牛を育てながら、生徒たちは多くのことを学んでいく。当時、小学3年生だった一人の少女は、「牛のお医者さん」になろうと決意。実際にその夢を実現する。

 テレビ新潟は、26年間の記録を、県内のテレビ局として初めて劇場用に映画化している。何より、継続と蓄積という手法によって描かれた、豊かな成果に目を見張る。「ローカル局は、ふるさとのために何が出来るか」という問いかけと、テレビの可能性を広げるチャレンジ精神を評価したい。

三重テレビ放送『ハンセン病に対する差別解消にむけた報道』

 02年に放送された「かけはし」は、三重県庁で長い間ハンセン病を担当してきた2人の男性と回復者の交流を描くドキュメンタリーだ。以後、現在までにハンセン病をテーマとしたドキュメンタリーを5本、ニュース枠でも20回に及ぶ放送を行ってきた。各地の療養所に隔離された県出身のハンセン病関係者が、故郷に帰れない実態などを明らかにしている。

 実にデリケートな問題を内包している難しい題材であり、現在は全国規模の報道も減っている。しかし、三重テレビ放送の活動は継続されてきた。そこには、差別や偏見の歴史の風化を押しとどめようとする使命感と、地域のメディアとしての責任感がある。

テレビせとうち『おばあちゃんの台所プロジェクト』
 
 「おばあちゃんの台所」という番組、その目の付けどころが秀逸だ。地元の素材を生かしきった、おばあちゃんの手料理。それは美味しいだけでなく、健康食であり長寿食でもある。食材を通じて地域の産物を知り、料理や技を通じて地域の食文化を継承できる。

 登場する料理は決して珍しいものばかりではない。かつて日本中の台所で、当たり前に見られた品々だ。むしろ、それらが自然に伝承されていないことに驚かされる。しかも番組は、大上段に伝承の意義などを標榜しているわけではない。

 さらに、この番組をベースに、多彩な広がりをもつプロジェクトへと発展させたことも評価された。新聞や雑誌との連動、番組レシピ本の出版、イベントの開催、ショップの開設など、セクションを超えて結集した女性スタッフたちの熱が、地域の人たちへと伝わっている。
(文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授)

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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