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村澤典知「時事奔流 経営とマーケティングのこれから」

星野リゾート、最強の経営…カギは20年間の顧客満足度調査、カスタマーセントリックな仕組み

文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員
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お題目で終わってしまう、カスタマーセントリック(顧客中心主義)

「お客様は、神様です」と公言する企業は一昔前より大分減ってきたものの、「お客様第一の会社です」「カスタマーファーストの会社です」と、カスタマーセントリック(顧客中心主義)を掲げている日本企業は多い。

 しかし、その内情はというと、社長の掛け声と“掛け軸”の中に納まった言葉で終わり、実際の会議となると、自分たちの商品やブランド、技術、組織のことばかりで、「顧客」がすっかり蚊帳の外に置かれてしまっているということが多い。

 カスタマーセントリックを威勢のいい掛け声だけでなく、「顧客(の声)を中心に経営のかじ取りをし、組織がそれに呼応して動く仕組みを持っていること」ととらえると、それに当てはまる企業は一気に少なくなるだろう。

 その視点で見ると、「リゾート運営の達人」を標榜し、「星のや」や「リゾナーレ」「界」などの旅館やホテルを運営する星野リゾートの取り組みは、カスタマーセントリックの教科書といえるかもしれない。星野リゾートの星野佳路代表は、つねづねマイケル・E・ポーターの『競争の戦略』、デービッド・A・アーカーの『ブランド・エクイティ戦略』などの経営理論の名著を教科書として徹底的に実践していることを公言しているが、その星野リゾートは、翻って「カスタマーセントリック」という観点から他社の教科書になり得る存在だろう。

 また、おもしろいことに、この星野リゾートの企業理念には、掲げられているはずの「お客様第一」や「お客様中心」のようなキャッチコピーは入っていない。代わりに入っている言葉は、「日本の観光をヤバくする」だ。

データをもとに、「全員」が顧客と向き合う

 カスタマーセントリックな組織になるにはいくつかポイントがあるが、その出発点は、いわずもがな「顧客を知る」ことだ。顧客が、どのようなニーズを持ち、何に満足し、何に不満を抱えているか。また、顧客がどのようなプロセスで自社の商品と出会い、決定したかといったカスタマージャーニーを正確に把握することが求められる。

 星野リゾートでは、20年以上も前の1994年から顧客満足度調査を実施し、顧客の声を定量的に把握している。以前は宿泊客に対してアンケート用紙での調査を行っていたようだが、今では宿泊者がチェックアウトした際に受付スタッフからURL記載の紙を渡されるか、後日アンケートの電子メールが届くため、宿泊者はネットで回答できるようになっている。

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