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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」

「金融業者化する」マルイ、ショッピングセンター化を加速

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学客員教授
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丸井の本業は金融業?

 丸井の決算内容を見ると、本業は小売業なのか、金融業なのかと首をひねりたくなる。

 丸井は、バブル時代にはDCブランドで若者を取り込み、「ヤングファッションのマルイ」といわれたこともある。だが、今の実態はファッション小売業とはもういえない。15年3月期において、小売事業の営業利益が81億円、カード事業の営業利益が201億円で、小売事業の2倍を超えている。売上高は、小売店舗事業が3076億円で営業利益率は2.6%、カード事業が706億円で利益率は28.5%。カード事業の利益率の高さが際立つ。

 丸井は1931年創業。高度成長時代には家具や家電の月賦販売で有名になった。60年には日本最初のクレジットカード「赤いカード(現在のエポスカード)」を発行している。消費者クレジット販売にはこだわりがあり、その後もショッピング主要客の若い女性をターゲットとして無担保キャッシングを提供し、ほかの金融サービスとは異なるセグメントを対象とすることで、カード事業は順調に伸びてきている。

 丸井のクレジットカードは店頭即時発行。会員は女性が68%を占め、年代も40歳以下が56%だ。業界全体では、それぞれ49%と28%なので、丸井は若い女性の割合が極めて高いことがわかる。若い女性は貸し倒れリスクが高いとして、他社の与信審査を通りにくい。だが、ショッピング主要客は若い女性だ。買いたいと思ったときに現金がないという若い女性にモノを売るために、丸井のクレジットカードは発行された。当時も、まだモノを売ることに主眼があったといえる。

 80年代後半の 「ヤングファッションのマルイ」の時代は、バブル終焉と共に終わりを告げた。営業利益は90年度をピークとして、その後は苦戦。売上高もこの20年余りで、6000億円から4000億円まで減少している。丸井は今、売り上げ不振の百貨店型ビジネスから専門店ショッピングセンター型へ業態転換をして、店頭売り上げに左右されない、テナントからの賃料収入で売り上げや利益を安定させている。また、カード事業も他企業や商業施設との提携を増やすことで会員数の拡大を図っている。

 そして、カード事業はフィンテック事業と名称を変え、カード会員を対象として、不動産業や家賃保証と保険も含めたサービスを積極的に展開しようとしている。

 小売業から新規顧客が入ってこなければ、顧客ベースの数は小さくなっていく。それは、金融サービスを売る顧客数が少なくなることを意味している。丸井は、金融事業のための顧客基盤を堅固なものにし直すために、小売業のビジネスモデルを変えようとしているのだ。

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